内容説明
遠く離れたカリブに残る、HIVに感染した弟と再会し、一度は捨てた故郷の家族との、愛と憎しみの日々を追憶する―。アメリカで人気沸騰のクレオール作家、ジャメイカ・キンケイドがすべての女性に贈る、せつなくも美しい家族ドキュメンタリー。1997年度全米図書賞最終候補作品「ノンフィクション部門」。
感想・レビュー
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nobi
70
短編集『川底に』の幻想と禁欲とはおよそ対極に見える現実と饒舌。弟の死を巡ってひたすら、むしろ目を背けたくなる思い出を二百頁に亘って語る。心理と感情についての仮説を次々と立てては検証を繰り返すように。既知の都合の良い心地よい仮説に傾斜しない。一般法則を見出そうというのでもない。あくまで自身が目にし触れ嗅ぎ感じ考えた冷厳な事象の検証を積み重ねる。十五歳の時わたしの大切な…を…してしまう母親の凄まじい仕打ちも。次第にその饒舌はうねりとなる。それは生きるという根源に分け入るための彼女なりのメソッドなのだと気付く。2017/06/25