内容説明
際限もなく迸る激しくも密やかな情熱。疾走と迷走を繰り返す比類なき文体と修辞。ブラウンが思いのたけをこめて紡ぎ上げた「知」の果てにあの錯綜した時代「十七世紀」が見えてくる。
目次
医師の信仰
壺葬論
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
傘緑
17
「セイレンが何を歌ったかとか…難問ではあるにせよ、推測の全く及ばないところではない」『ドクトル・ブラウンの博識 骨壺の謎を追え!』ノリッジ近郊の野原で、古代ローマ時代のものと思われる五十個もの壺に納められた人骨が発見された。大量死体遺棄事件である。遺体は火葬されたかのように丁寧に焼かれ、埋葬されたかのように丁寧に土に埋められていた。また、櫛や鋏、オパールらしき宝石といった副葬品と見紛うばかりのダイイングメッセージも発見された。ここにデュパンの師匠筋の一人の学匠医師が捜査に乗り出した(コメント欄へ) 2016/10/02
misui
7
ゼーバルト『土星の環』またはボルヘス関連で。「医師の信仰」は信仰告白の書。目的を持って読まないとつらいが、17世紀の一知識人の思想を知るにはいい。理性をもって知を探求することが神の摂理の正しさを証明する……、ブラウンが近代的理性の黎明期の人物でありデカルトの同時代人というのがポイント。「壺葬論」は発掘された骨壷をめぐる論考。古代の葬制を論じつつ、信仰の前では死後の名声を願うことなど空しいと結論づける。『土星』の意図がややくっきりしたし、「トレーン、ウクバール…」に本論が登場する理由もわかった。2012/02/26