感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ねこさん
22
明け方に目が覚めて、十牛図なぞを読みながらぼんやり過ごせることのありがたさよ。山田無文53歳、あと何年でこの提唱ができる境地になれるかと我の未熟を実感す。2022/02/09
さっちも
15
無常を主張する、無常を欲望することはもはや無常ではないといえば良いのか。無常に徹しようとする禅宗は、何らかの目的をもっての、というより、何かをあてにしての修行は本当の修行ではない。そのため本書でも「悟り」と設定しておいて、「悟り」を忘れ、ただひたすら座禅、ただひたすら修行に没入していく事で仏性が開けるという展開になる。「悟り」の話は立ち消えたのか、継続しているのか判然とせず、良寛の境地を引き合いにだし「デクノボー」的な心境へ至るのが良いというような事を後半部に費やす。冒頭に、色界、無色界、欲界の三界を超え2017/11/16
kanaoka 57
9
心のなかに仏性(牛)を追い求める。しかし仏性とは鏡であり、それは全てを映すが自らを映すことはできず、探そうとすれば見出すことはできない。我が無くなったとき、牛がゴロリと転がりだす。そして一切万象は心であり、仏性の顕れであることを発見する。そして仏性が分かれば牛はもういらない。悟りも不要となる。求めるものは何もなく、よしあしはなく、生きてもよし、死んでもよし。何も思わず、何も考えず、それは、ありのままである。2017/01/02
高渕太朗
5
仏道の悟りとは何たるかを十枚の牛の絵を通して教えてくれる本書。本来の十牛図は全て漢文で説明が書かれているので読みこなすのは難しいが、本書では著者の山田無文老師が門外漢にもわかりやすく現代語で説明してくれている。故事や公案などを引用し、十枚の牛の絵のエピソードに関連付けて説明してくれるので読者は仏教の知識を深めるとともに仏道の悟りとはなんたるかを知ることができるだろう。この他には柴山全慶老師が解説してくださっている十牛図なども評価が高いが、こちらは廃盤になっている可能性が高く入手は困難かもしれない。
ねこさん
3
『十牛図』も、当時53歳の無文老師の言葉も平易だ。禅宗の先賢は「教外別伝」とか「不立文字」とか難しいこと言う割に、懇切丁寧な解説本も残してくれていてその実かなり優しい。本来は真面目にお経を勉強すべきな訳で、むしろここまで書くのは野暮だと思う位だ。『十牛図』をつくられた廓庵禅師もまた然り。ちなみに無文老師の話って、初見でありながら既視感があり、予感でありながら記憶から呼び起こされているような気がしてくる。きっと入鄽垂手を地でいく人だったのではないだろうか。一度読んだら、焼いてしまえるようになりたい一冊。2012/08/13