感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
おおにし
17
ビルマ駐留の軍医であった著者が戦後25年たって発表した随筆集。「私にとって、戦争の記憶は、とりもなおさず、抜歯のきかぬ虫歯である。」とあるように、時々襲ってくる戦争体験の苦しみと闘いながら、記憶を美化せず戦場の日常をありのままに描いた随筆はどれも名文ぞろいだ。上官であった水上少将のエピソードがいくつか出てくるが、将校の中にこんな温かい心を持った人物がいたことを知ることができてよかった。本書のような優れた戦記が絶版になっているのはとても残念。ぜひ復刊してほしい。2021/01/11
kyuuki
3
名作である。 あの戦争を語るにあたっては、「酔いと醒め」この精神を常に忘れてはいけないと思った。 2014/09/25
げんこよん
1
ヴィクトール・フランクル氏の『夜と霧』と似た様な読後感。同じ戦争での実体験についての著述で、お互いに理性的な医師が著者のためかもしれない。押し付けがましくない淡々とした筆致で、内容についての具体的な感想は無いのだが、何かぼんやりとした現場のイメージ映像がじっと記憶の底にとどまる感じ。『挿話ふたつ』の一つ目のエピソードがとても印象的。本文から、「私たちはじぶんの声の質にふさわしく発言すればよいし、じぶんの脚力に応じてあるいてゆけばよい。じぶんの視力が、人よりすぐれたものであるなどと、思いあがらぬがよい。」2021/02/20