内容説明
ハビトゥスからジェンダー論まで。修道士もおこなっていた看護がいつか母性という評価にすり替り、そこに「女性」がとりのこされた理由を、ブルデュー理論と、フランス社会史を遡行しながら探る。
目次
序章 問題の所在と看護の「場」
第1章 看護の担い手(キリスト教と看護;女性と看護の結びつき)
第2章 看護の医療化(伝統的な「医」;革命後の変化とライシザシオン;「医」と身体をめぐる変化;世俗化と女性労働)
第3章 看護の職業化(ライシテと看護;看護の職業化への道―acte hospitalier「もてなし」からprofession「職業」へ;女性の適正と看護)
第4章 看護のジェンダー化(看護は女の仕事か;現代における看護―生まれついてか、選び取ってか)
著者等紹介
佐藤典子[サトウノリコ]
慶應義塾大学文学部卒、お茶の水女子大学大学院人文科学研究科修了、同大大学院人間文化研究科単位取得退学。日本学術振興会特別研究員(DCおよびPD)在籍中にパリ社会科学高等研究院(EHESS)に留学、現在、慶應義塾大学文学部、お茶の水女子大学文教育学部ほか非常勤講師、東京大学医学系研究科客員研究員。社会科学博士(お茶の水女子大学)。専門は、医療・看護、家族の社会学、日仏比較研究、フランス思想(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ぷほは
7
前半は看護職が世俗化していくプロセスを追ったフーコー風の社会史、後半はブルデューによるジェンダー論風の読み解きといった構成。後者はブルデュー自身の単純明快ではあるがいささかお粗末な道具立てによって大したことは言えていないが、前半は著者の調べてきた事象がクリアに示されている。看護といえば英ナイチンゲールという方向ではなく、仏社会の中で描かれる職業化の経緯は、例えば19世紀末に至っては日本さえ手本とされていたなどの興味深いエピソードが多く、また例の東京医科大の入試問題を想起するようなアクチュアリティもあった。2018/08/28
なーちゃま
4
人を看護する社会的存在としての修道士から職業としての看護師への歴史的変遷と、それがなぜ男ではなく女に課せられてきたのかというジェンダー史が交錯する良書。病に罹患した者に仕えることを通じて神に仕える修道士による看病に起源を持ち、それが「母性」「女らしさ」と結びついて、「看護は女性の仕事」へと固められていく様子が非常にわかりやすく描写されている。近年読んだ中で最も説得力を感じた社会学の本。大学時代から積読されていたが、もっと早く読めばよかった。2024/09/23