出版社内容情報
「喉が鳴る景観」を保存し価値を高める都市計画とは
ワインスケープとはフランスのブドウ畑と直近にある醸造や貯蔵、発酵室・樽熟成庫・瓶貯蔵施設など関連する施設と、それに伴う農道などの交通基盤が形成する景観のことである。 そこでは景観と調和した町並みの整備によりイメージを向上させ生産物や観光面での付加価値を増加をもたらしている。
本書はフランスの銘醸地のワインスケープを主軸に建築学と都市計画の視点から文化的景観の保存を困難にする要因と対抗した制度設計、保存論理、それらを活用した観光の実態、新たなワインスケープの創造に関する分析をまとめたものである。文化財保護や都市計画ありきではなく、理想の生活や産業の実現のためにどのような規制や事業が必要なのか。ワインスケープの保全の観点からフランス都市計画を論じた本書は「おもてなし」や「食文化」など文化の発信、「観光立国 日本」を正しく推し進めるためのまちづくり関係者への一冊
序 マンガストロノミー、喉が鳴る景観、ワインスケープ
第1編 フランスの、そして世界のワインスケープで今、何が起きているのか
第1章 フランス、そして世界のワインスケープの現在
第2章 ワインスケープの保全と刷新のための制度
第3章 飲食と銘醸地の世界遺産
第2編 フランスに於ける銘醸地世界遺産の論理、展開、そして脱線
第4章 サン・テミリオン自治区 ー原産地統制呼称(AOC)制度、拡張、博物館都市
第5章 シャンパーニュの丘陵・メゾン・酒蔵 ー呼称保護、現代のストーリー、産業遺産
第6章 ブルゴーニュのブドウ畑のクリマ ー衒学的強弁、ヴァナキュラーな遺産、的外れな議論
第3編 フランスに於けるワインスケープの向かう先
第7章 文化財保護と都市計画の6次産業化 ーファッション化、テロワール、ラギオール観光
第8章 ワイン観光 ー惰眠、販売補完策、子供の取り込み
第9章 現代建築のワイナリー
第10章 俯瞰と展望 ースマート・スプロール、好い加減の文化財保護、マイナスの政治主導、しかし植民地化の懸念
鳥海 基樹[トリウミ モトキ]
著・文・その他
内容説明
本書は五感の書である。ワインスケープを題材に、味覚を超え、視覚・嗅覚・聴覚・触覚を総動員して、風土のあり方を問う書である。ワインスケープとは、ブドウ畑の風景に留まらない。農道や休憩小屋にはじまり醸造所や集落も含まれる。また、サン・テミリオン、シャンパーニュ、そしてブルゴーニュと続く銘醸地世界遺産の誕生は、それを産業遺産やヴァナキュラーな遺産にまで拡張してきた。さらに、銘醸地を探訪するワイン観光の進展や目の肥えたクライアントの審美眼に応答し、アヴァン・ギャルドなワイナリーやブティックにまで展開している。つまるところ、フランスでは、ワインスケープが味覚を超えた価値を創造している。本書はそのような風土を構築するための「文化とまちづくり」の書なのだ。
目次
序 マンガストロノミー、喉が鳴る景観、ワインスケープ
第1編 フランスの、そして世界のワインスケープで今、何が起きているのか(フランス、そして世界のワインスケープの現在―理想、ジレンマ、進歩的伝統主義;ワインスケープの保全と刷新のための制度―優品保護、醜景発生防止、特例認容;飲食と銘醸地の世界遺産―美食の危機、新たな保存論理、ネットワークの構築)
第2編 銘醸地世界遺産の論理、展開、少しばかりの脱線(サン・テミリオン自治区―原産地統制呼称(AOC)制度、拡張、博物館都市
シャンパーニュの丘陵・メゾン・酒蔵―呼称保護、現代のストーリー、産業遺産
ブルゴーニュのブドウ畑のクリマ―衒学的強弁、ヴァナキュラーな遺産、的外れな議論)
第3編 ワインスケープの向かう先(文化財保護と都市計画の6次産業化―ファッション化、テロワール、ラギオール観光;ワイン観光―惰眠、販売補完策、子供の取り込み;現代建築のワイナリー―白馬、電子レンジ、ハイブリッド・ヴァナキュラリズム ほか)
著者等紹介
鳥海基樹[トリウミモトキ]
1969年生まれ。首都大学東京准教授。2001年フランス国立社会科学高等研究院(EHESS)博士課程修了(Docteur(´etudes urbaines))。2004年日本ソムリエ協会ワインエキスパート。2015年サン・テミリオンを含むフランスの文化財保護研究で日本イコモス奨励賞。2016‐2017年EHESS客員研究員(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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