出版社内容情報
からだから遊離してしまう「魂」のことを失われた「いのち」といいます。けれども、われわれの前にある、失われた「いのち」とは、死者のことなのでしょうか。
もともと「魂」は人間だけではなく、生きているすべてのものに存在すると考えられてきました。なんらか
の形で受け継がれ、受け継いでいくものとしての「魂」。「魂」の原義や違いについて古今東西の思想を掘
り下げながら、「魂」の意味するものを捉え直し、日本人やヨーロッパ人の死生観、あるいはその言説に寄
り添いながら、魂を受け継ぐこと=「魂の承継」について、死生学、ヨーロッパ思想史、宗教学の視点から
考察します
インタビュー
「日本人の死生観と魂の承継」
東京大学大学院人文社会学系研究科教授・島薗進
ごく普通に考えるならば、「死の研究」と訳されるはずの言葉が、わが国ではなぜか「死生学」として定着
しました。それは、「死生観」という言葉がすでに存在していたからにほかなりません。生と死を表裏一体
のものとして捉えてきた日本人。その独自の思考方法は、日本人の「魂」観と深いつながりがあります。日
本人の死生観において「魂」はどのように位置づけられてきたのか、そのことを踏まえながら「魂を受け継ぐ」
ことの意味を探ります。
「魂の像/道具としての身体…ヨーロッパ思想のなかで「魂」はどう捉えられてきたか」
専修大学文学部哲学科教授・神崎繁
ホメロスの時代に形成され、そしてプラトン、アリストテレスにおいて一つのまとまった概念として、その
哲学大系に位置づけられた魂(プューシケー、アニマ)。それは、近代哲学の始まりを告げるデカルトの思
想へもつながっていきます。ギリシャ以来のヨーロッパ思想史を「魂」観の系譜として捉え直し、魂と身体
の分離/結合、集中と分散のベクトルの交錯を軸に、「魂」の含意するものを探ります。
「死のなかの生、生のなかの死…宗教、魂、スピリチュアリティ」
インタビュー 鳥取大学医学部准教授・安藤泰至さん
たとえば、生命倫理の問題は、「生とは何か」「死とは何か」、さらには生きているとはそもそもどういう
ことをいうのかという根源的な問いをわれわれに突き付けます。元来宗教や宗教学は、そうした問いを問い
としてまるごと受容し、なんらかの「答え」を出すものとして機能してきました。その根底には、「魂」へ
の深い共感があるからでしょう。個別宗教を超えて、いわば宗教を越境するように存在するスピリチュアリ
ティとしての「魂」。宗教と「魂」の関係をスピリチュアリティを軸に考えます。
目次
特集 魂の承継(日本人の死生観と魂の承継;魂の像/道具としての身体―ヨーロッパ思想のなかで「魂」はどう捉えられてきたか;死のなかの生、生のなかの死―宗教、魂、スピリチュアリティ)
書物のフィールドワーク



