内容説明
近代の、いわば時代の申し子である社会学は、21世紀への変わり目に、われわれに何を提示できるのであろうか。いま、直面する社会変容を描く。
目次
モダニティの非連続性
安心と危険、信頼とリスク
社会学とモダニティ
モダニティ、時間、空間
脱埋め込み
信頼
モダニティの再帰性
モダニティか?ポスト・モダニティか?
モダニティの制度特性
モダニティのグローバル化
二つの理論的視座
グローバル化の諸次元
信頼とモダニティ
抽象的システムにたいする信頼
信頼と専門家知識
信頼と存在論的安心
前近代的なものと近代的なもの
抽象的システムと親密な関係性の変容
信頼と対人関係
信頼と人格的アイデンティティ
近代世界のリスクと危険
リスクと存在論的安心
適応反応
モダニティの現象学
日常生活における脱熟練化と再熟練化
ポスト・モダニティ論にたいする反論
超大型トラックに乗って
ユートピア的現実主義
未来への方向づけ―社会運動の役割
ポスト・モダニティ
近代は西欧的企てか?
結論的所見
付論 モダニティと理想社会
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
harass
63
英国ブレア政権のブレインの大御所による社会学論考。現在は再帰的近代であると語る。再帰的近代とは、これまでの近代の要素が個人や集団自身により見直され、各要素が修正徹底化されることをいう。1990年の出版であるがグローバル社会の台頭をすでに予言し考察している。ただまあ、社会学というよりも社会思想に近いかと。正直、こちらの知識が足らないのか意味を掴み損ねている気がする読書だった。義務的に目を通してしまった。要再読。2017/07/24
ころこ
42
時代区分として近代は長く、フェーズによって細分化することで時代の特徴をより表現することができる。近代的制度は社会の発展を促したが、それを改善し振り返りモニタリングすることを再帰的と呼ぶ。再帰性によって工業主義、資本主義、監視、軍事力がグローバル化して発展していく。似たような言葉にポスト・モダンがあり、後半で両者を比較している。ポスト・モダンが遠心化作用、秩序の崩壊、価値の分裂、人々の無力感なのに対して、再帰的近代はグローバルに秩序や価値を統合し、それまでの近代を発展させ乗り越えるイメージで論じられている。2025/02/17
白義
15
本書の見方に従えば、近代とは伝統的世界から我々を解き放ち、人々に「一体私とは、私がいるこの社会とはなんなのだろう」と考えさせる傾向が拡大した社会だと言えるだろう。ポストモダンとは確固たる基準が全て消滅した近代の後の時代と思われているが、本書では、むしろポストモダンと思われているものは、グローバル化や抽象的システムの拡大等によるモダニティの徹底が産み出したものだという風にとらえ直している。そこでは盲目的信頼と不安、自己アイデンティティと政治など一見対立するものが複雑に絡み合っている2014/12/16
K.H.
10
「われわれは、モダニティの彼方に移行したのではなく、モダニティが徹底した局面を、まさに生きている」(70ページ)——ちょくちょく引用されているのを見かけるこの一文のために読んだようなもの。信頼とリスクが論じられている箇所がよく理解できなかったが、あまりこだわるところではないのかもしれない。2024/01/01
matsu
9
脱埋め込み化からグローバル化の流れは秀逸。しかし暇人以外は解説書だけ読むことをおすすめする。統計が登場しない社会学はフロイト的夢想とも思った。2017/01/15