出版社内容情報
放浪の俳人・種田山頭火。業を背負い、乞食流転の旅に出る。山頭火の俳句を読み物風に解説し、影絵とともにその世界を魅せる。
【収録句】 分け入つても分け入つても青い山/焼き捨てて日記の灰のこれだけか/酔うてこほろぎと寝てゐたよ/あの雲がおとした雨にぬれゐる/うしろすがたのしぐれてゆくか/笠へぽつりと椿だつた/さくらさくらさくさくらちるさくら/あるけばきんぽうげすわればきんぽうげ/雨ふるふるさとははだしであるく/鉄鉢の中へも霰/わらやしたしくつららをつらね/ふくろふはふくろうでわたしはわたしでねむれない/病めば梅ぼしのあかさ/てふてふひらひらいらかをこえた/うまれた家はあとかたもないほうたる/お墓したしくお酒をそそぐ/うどん供へて、母よ、わたくしもいただきまする/六十にして落ちつけないこころ海をわたる/もりもりもりあがる雲へ歩む
内容説明
放浪の俳人、種田山頭火。彼の自由な生き方は、俳句となって残りました。そこには山頭火の心のつぶやきが聞こえます。山頭火の心象風景をとらえた鑑賞文と美しい影絵で、新たな世界がひろがります。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヒラP@ehon.gohon
18
破天荒で退廃的な山頭火の生き様の中で生まれた哀愁のある歌。何よりも素晴らしい影絵に包まれて、演歌のようでした。2022/02/18
mikipon
7
「分け入っても分け入っても青い山」が一番好きな句です。別の本で山頭火のことを知って、色々聞いてきた娘に借りてきましたが、絵本と言いながら、句と影絵、添えられた鑑賞文は大人でも十分な読み応えでした。2014/05/19
Cinejazz
6
きょうは、3月6日。母の四十七回忌。・・・私たち一族の不幸は、母の自殺から始まった。私が十歳のとき、母は井戸に身を投げて死んだ。私はその日、友だちとチャンバラごっこをして遊んでいた。母屋がさわがしいので行ってみると、母は髪を乱し、冷たい白い体になって引き揚げられていた。泣いてすがって母をよんだが、母は冷たい口をくいしばって、答えなかった。母の大好きだったうどんをお供えして、これから母といただこう。 種田山頭火(1882-1940)の「うどん供えて、母よ、わたくしも いただきまする」の句が心に沁み入ります。2021/10/06