出版社内容情報
《内容》 司法あるいは犯罪精神医学という言葉は我が国にも存在する。しかしその多くは大学の研究者が鑑定を通して犯罪の精神医学的原因、責任能力、社会病理との関連などを遠巻きに論ずる高尚な学問であった。その視点は刑務所の中にまで及んでいない。責任能力を認められて贖罪の日々を送る受刑者と日常的にあいまみえる、そのような泥くさいまでの臨床実践に裏づけられた“精神障害犯罪者の治療論”が展開されたことがどれほどあっただろうか。 本書の著者らはいずれも現職の矯正医官であり、鑑定もさることながらむしろ精神障害受刑者の治療を職務とする精神科医たちである。2部構成の柱となる第1部に治療編を当てるという思い切った倒叙の形式こそ、著者らの長年の取り組みのもたらしたひとつの到達を示している。 まぎれもなく新しい犯罪精神医学の誕生である。 《目次》 序論 我が国に精神障害犯罪者処遇制度は存在しないのか第1部 治療編 1.北九州医療刑務所における精神障害受刑者の治療の流れ 2.矯正施設での覚せい剤依存症治療 3.性犯罪者の治療-矯正の果たす役割 4.受刑者に見られる拘禁反応の分類と治療 5.矯正施設における精神分裂病治療とその展開の可能性 6.矯正施設におけるデイケア 7.精神障害無期囚について 8.ドイツの社会治療施設第2部 鑑定編 1.計画的大量殺人者の精神病理学的検討 2.命令性幻聴と犯罪 3.精神障害による免罪符-ハイジャック不起訴後の殺人事例 4.“鑑定困難者”の詐病2例 5.てんかんと犯罪-発作およびてんかん性格との関連 6.器質性・症状性精神障害から考える責任能力
内容説明
著者らの属する北九州医療刑務所は、精神障害のある受刑者を収容して治療を施す専門施設である。従来のこの分野は犯罪精神医学=精神鑑定という枠にとらわれがちであった。しかし、鑑定を受けた者たちがその後どこでどのように治療処遇されるのかが見通せなければ、正しい鑑定もありえない。本書は触法精神障害ジレンマへの、著者らの実践を通した一回答である。
目次
第1部 治療編(北九州医療刑務所における精神障害受刑者の治療の流れ;矯正施設での覚せい剤依存症治療;性犯罪者の治療―矯正の果たす役割;受刑者にみられる拘禁反応の分類と治療 ほか)
第2部 鑑定編(計画的大量殺人者の精神病理学的検討;命令制幻聴と犯罪;精神障害による免罪符―ハイジャック不起訴後の殺人事例;“鑑定困難者”の詐病2例 ほか)
著者等紹介
林幸司[ハヤシコウジ]
北九州医療刑務所医療部長
古賀幸博[コガユキヒロ]
北九州医療刑務所医療一課長
松野敏行[マツノトシユキ]
北九州医療刑務所医療二課長
藤丸靖明[フジマルヤスアキ]
北九州医療刑務所保健課長。現・国立病院九州医療センター
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