内容説明
丸山が近代世界の前提としていた認識と価値の枠組の原型には西欧の理念があるが、「9・11」以後、その理念とは似ても似つかぬ剥き出しの暴力を米国とイギリスが中心になって行使している。こうして、普遍性・公共性を志向してきた西欧近代の「理念」は、限りなく暴力的な「存在」によって裏切られている。多くの人びとが実感している、二一世紀初頭のこの恐るべき現実の只中にあって、この「理念」に賭けた丸山思想は生き延びることが可能なのか。戦後思想史を知る者には、切実で魅力的な問いに、著者は本書で取り組んだ。
目次
1 9・11以後丸山真男をどう論じるか(この六〇年のさまざまな言及;丸山真男をいま読む意味 ほか)
2 「時代の子」丸山真男の宿命―作為という価値の呪縛を生きる(丸山真男は「進歩的文化人」であったか;軍国主義批判=自然に対する「作為」の優位 ほか)
3 擁護しなければ葬送もできない―丸山真男の追悼のされ方(運動家!丸山真男;後から出てくる対丸山ケチツケの知恵 ほか)
4 戦後思想は検証されたか―書評・小熊英二『民主と愛国』(民主・愛国・公共性の通底―戦中・戦後の連続;近代主義・「国民主義」批判の通念からの自由 ほか)
著者等紹介
菅孝行[カンタカユキ]
1939年東京に生まれる。1962年東京大学文学部卒。現在劇作家、評論家、財団法人静岡舞台芸術センター付属研修所講師、河合塾小論文科講師、河合文化教育研究所研究員
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感想・レビュー
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ハンギ
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演劇論の理論家でもあり、反天皇の著作などでも知られている、菅孝行さんの丸山真男についての評論。1番最後に小熊英二さんの「民主と愛国」についての辛口の書評も掲載してある。全体的にまとまっていない印象も受けたが、菅さんによって丸山真男という思想家についていかに雑多な議論がまかり通っているか思い知らされる。きちんと丸山の葬式を出さないといけない、というのはそうだと思う。西部すすむなどはもちろんのこと、酒井直樹、姜尚中、といった比較的若い世代に対してもバッサリ切り捨てている。見ていて気持ち良い。⇦そこか。2011/11/26




