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内容説明
肺病を疑われた若き主人公はグラーフェンホーフ結核療養所に収容される。死と絶望ばかりを目にしたそこでの日々を回想しながら、語り手は一つの探究を、自らの「原因」探究を進める―。ベルンハルト自伝五部作、日本語訳刊行完遂。
著者等紹介
今井敦[イマイアツシ]
1965年、新潟県生まれ。中央大学大学院文学研究科単位取得満期退学。1996年からインスブルック大学留学、1999年、同大学にて博士号(Dr.phil.)。現在、龍谷大学経済学部教授。専攻は現代ドイツ文学、とくにマン兄弟、南チロルの文学、トーマス・ベルンハルトを専門とする(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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NAO
53
ベルンハルトは、青年期に自殺願望に囚われ、自分の意志で学校を辞めて場末の食料品店で働き、活路を見出そうとした。(『地下』の時期)教会で歌い声楽家として身を立てる可能性が見えたとき、急性肋膜炎で倒れ生死の境をさまよい、病後の療養中に受けた検査で肺に影が見つかり、18歳から20歳直前までに2回グラーフェンホーフに収容されており、『寒さ』はこの時代をのちの視点から回想した内容になっている。施設に入る数ヶ月前に祖父が亡くなっていて、語り手は癌で苦しむ母親を見捨てるように施設に入った、とある。⇒2025/04/30
rinakko
6
自伝五部作より4作目。肺に影が見つかった主人公が、収容された結核療養所で過ごした日々が描かれる。痰の製造法を身につけ、“病と死の学問に没頭”しながら、ベルンハルトの筆致なのでどこか笑えてしまって暗澹とならない。そして医者への服従に抵抗し続け、立場を逆転させていく(少なくとも本人にとっては)。『悪霊』を読み返したくなる。2025/06/30
のこのこ a.k.a. TOKKY
4
病や環境に蹂躙される立場から、それらをコントロールしようとする術を心得るようになる転換期的な頃の自伝。相変わらず色々起こるし、なんだったら以前より悲惨まであるが、この頃の経験無くしてベルンハルトはあり得ないんだろう。 自分にはここまでの経験は無いが、家族へのある種の不信や、メランコリー、絶望、倒錯性、粗暴さetc…が何に由来するものなのかを気にする点、ベルンハルトの中に自分を見てしまう。 ドストエフスキー『悪霊』にかなり心打たれた描写があり、今後ドストエフスキーを読み進めるのもかなり楽しみになった。2025/06/29
dani
1
図書館の新刊コーナーにあったのを前知識なしに手に取ったら、『魔の山』の世界だった。そして、著者が18歳頃の自伝らしい。58歳まで生きたってことは、治癒したんですよね。2025/04/20
yt
1
冒頭の痰工場っぷりに爆笑2024/12/25
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