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内容説明
ただ私の体験を。私の恐れを。1891年に生まれ、1981年に世を去った祖父は、おのが半生を二冊のノートに綴っていた。戦争の記憶と美の崇高、ふたつともに捉えられ離れられなかったその生涯を、手稿を託された孫―作家ヘルトマンスが読み解いていく。
著者等紹介
ヘルトマンス,ステファン[ヘルトマンス,ステファン] [Hertmans,Stefan]
1951‐。ベルギー・オランダ語圏の詩人・作家。1981年に小説家としてデビュー後、詩、エッセイ、戯曲、小説を多数発表。国内あるいはオランダ語圏の文学賞をたびたび受賞し、『戦争とテレピン油』では権威あるAKO文学賞を獲得した。オランダ語圏での評価の一方で国際的には知名度が低かったが、『戦争とテレピン油』がはじめて英訳されWar and Turpentineのタイトルで刊行されると、「ニューヨーク・タイムズ・ブックレビュー」の2016年ベスト10の一冊に挙げられるとともに2017年のマン・ブッカー国際賞の候補作となるなど注目を集め、ヘルトマンスの名は世界的に知られることとなった。次作De bekeerlingeも高い評価を獲得し、英訳版The Convertも英米のメディアで好評を博している
新目亜野[ニイメアノ]
オランダ語文芸翻訳者。ウィーン大学文学部オランダ学科卒(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ヘラジカ
53
オランダ語文学。戦争と芸術に生きた祖父の手記を読み解き、その生涯を物語として再構築した、複雑で高精細、そして力強い傑作。曽祖父の死までを描いた前半は緩慢ながらも、筆運びが愛情と悲哀で彩られていて非常に美しい。一転して祖父の視点へと変わる第二部は凄絶。第一部とはまた違った鮮烈な描写は、呑まれるような迫真力を持っている。ここまで”体験”させる戦争文学は久々に読んだかもしれない。叙情的で静かな筆致ではあるが、恐ろしいほどに生命感に溢れたヴィヴィッドな作品。こちらも現代文学としては間違いなく必読の一冊だろう。2020/11/01