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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
NAO
77
『原因』のその後。このままでは死ぬしかないと思い詰め、ギムナジウムを辞めた主人公。彼が向かったシュルツハウザーフェルト団地は、ザルツブルクにとっての辺獄だと彼は考え、その辺獄で、少年は失っていた快活さを取り戻していく。だが、その一方で、自分はこの場所に救われた、そこが嫌いではなかったといいながら、作者がそこを辺獄といい、そこに住む人々をクソみそにけなしているのには、ちょっとどうかなと思った。しかも、彼自身は、元の居場所に戻っていってしまうのだ。これでは、そこに住んでいる人にあまりにも失礼ではないだろうか。2021/01/31
かふ
18
自伝五部作の二作目。『原因』の続きで暗い寄宿生生活から貧民街の団地の食料品店で働くことになる。職安ではもっといい仕事を紹介してくれるのだがベルンハルトは最低限の仕事を求めてザルツブルクの明るいほうではなく貧民街の方へ行くのだ。そこの経営者である男から商売の方法を学び商人も悪くないと思うのだが、あるきっかけで音楽の道に進む。ギムナジウム時代は祖父によって孤独さを学んだが、ここでは人間関係を学び、やりたいことの方向性が見えてくる。人々とから学んだことが綿々と書かれていて感動的。薄い本だが読み応えがある。2025/01/27
のぞむ
5
トーマス・ベルンハルトはいつも常に怒っている。例えばある箇所で人は真実を言おうとして嘘偽りをしてきたが遂に真実は嘘の集約である事実だけが残った、と激しく。だが終盤ベルンハルトが子供の頃地下食品店で働いた25年前の客に出会い「どうだって同じことさ!」と去り際に言われてベルンハルトは少しでも慰められたのか少し気になった。相変わらずベルンハルトは怒る時同じ言葉を何回も続け様に繰り返すところが面白い。2025/09/08
uchiyama
3
「ほかのみんなは反対方向にいる、と思った。」という冒頭から惹き込まれて、以下、丸々一冊、「反対方向に」の志向と試行で埋められていくこの本、今や世界が俄然表面的には傷つけ傷つくことを無駄で無益な行為として回避する方向にむかう(けれど匿名空間では汚い罵詈雑言が飛び交って偽善的でもある)中で、いくらなんでも決めつけや誇張が過ぎないか?しかも実名で…な批判的言辞に満ち満ちてるってだけでも独自のインパクトを持つベルンハルト、まさかのオチは「あばよ!どうだっておんなじことさ。」で、唖然。面白くて一気読みでした。2025/06/30
バナナフィッシュ。
3
ほとんどの人が何も考えを持たず、定められたレールの上を走り、人生を終えていく。何も考えないことは楽だが、それが幸福に繋がるとは全く別の話だ。個人的には全てのことを自分で選び、難しいのであれば絶えず努力し、努力した上で諦めたい。最初から努力せず、盲目的にレールの上を走るのは受け付けない。2020/10/28