内容説明
ベルギーの幻視者たち―マーテルランク、ローデンバック、ピカール、エレンス、ゲルドロード、オーウェン、ジャン・レー、ティリー…蠱惑に満ちた幽暗の文学世界へ読者を誘う、本邦初のベルギー幻想文学選集。アンソロジスト・東雅夫氏による序「ベルギーの魔に魅せられて」を収載。
著者等紹介
岩本和子[イワモトカズコ]
神戸大学大学院国際文化学研究科教授。専攻はフランス語圏文学・芸術文化論(ベルギーのフランス語文学、スタンダール研究)。博士(文学)
三田順[ミタジュン]
北里大学一般教育部講師。博士(学術)。専攻は比較文学(ベルギーにおける象徴主義文学、美術)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
HANA
74
ベルギー作家によってフランス語で書かれた幻想小説アンソロジー。マーテルランク、ローデンバックやトーマス・オーウェン、ジャン・レーといった有名な作家から、初めて聞く人まで内容は豊富。収録作は全て未読のものばかりと贅沢な一冊であった。収められた作品は極めて憂鬱な作ばかりで、何となくベルギーが面した北の海を連想させるよう。「陪審員」や「劇中劇」といった主人公がだんだんと追い詰められていくのも良いが、「夜の主」みたいに純粋ホラーを連想させるのもまた良い。こちらの世界とは少しずれた、陰鬱な世界を存分に楽しめました。2017/01/17
やいっち
31
期待と多少の不安の念を抱きつつ、手にし、一気に読了した。味読できたとは言い難い。 ベルギーというと、有名な画家に、ヤン・ファン・エイクやルネ・マグリット、ポール・デルヴォー、ジェームズ・アンソール、フランス・ハルス、ピーテル・パウル・ルーベンスなどがいる。壮観だ。 ミシェル・ド・ゲルドロード作の「魔術」を読んでいたら、ジェームズ・アンソール作の『仮面の中の自画像』を思い浮かべていた。 小説家というと、ジョルジュ・シムノン。かの女優オードリー・ヘプバーンもベルギーの出身と今になって認識した。2018/08/18
かもめ通信
26
ベルギーという国は、オランダ語、フランス語、ドイツ語の三つの言語を公用語としているそうだが、本書はフランス語で書かれたベルギーの幻想文学を集めて組まれたアンソロジーで、1887年から1960年までの8作家9作品が収録されている。なかなか読みでのある表紙に負けないおどろおどろしさ。 総じて陰鬱な物語であるのにも関わらず、どこか妙な色気が漂い、華やかさはないのに美しさがあるのが興味深い。収録作は全て未読のものばかりというなんとも贅沢な一冊でもあった。 2017/03/10
内島菫
24
前に読んだイーディス・ウォートンの『幽霊』の方が好みだったのは、本書は幻想ものなので(幽霊らしきものも出てくるが)、外側も内側もしんとしたところに薄気味悪く不可解な不気味さのしっぽをのぞかせる幽霊ものと異なり、装飾的な状況と大きな身振りの内面性とが盛られているからだろう。そんな短編集の中で、第三者の手記という設定で最も簡潔な描写だったのがページ数も短いエレンスの「分身」。単なるコピーのような分身ではなく、性別も年齢も違う分身と分身を生み出したことにより本体の性質も変わってしまうというアイデアも面白かった。2017/12/27
かわうそ
22
フランス語によるベルギー幻想小説というなかなかニッチなところをついたアンソロジーで、解説が充実しているので今後の参考になる一冊。重厚な作品よりはややエンタメ寄りの「時計」「分身」「陪審員」あたりがお気に入り。特に「分身」は何とも変な話で面白かった。2017/01/07
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