フランダースの声 モンテカルロ

テリン，ペーテル【著】〈Ｔｅｒｒｉｎ，Ｐｅｔｅｒ〉/板屋 嘉代子【訳】

松籟社（2016/10発売）

• サイズ B6判／ページ数 165p／高さ 19cm
• 商品コード 9784879843500
• NDC分類 949.33
• Cコード C0397

内容説明

あの女は、私をおぼえているはずだ―１９６８年、モンテカルロ。Ｆ１モナコグランプリのスタートを控えたサーキットで、その事故は起きる。居合わせた人気女優を、身を挺して救ったひとりの整備士の、その後の人生は―

著者等紹介

テリン，ペーテル［テリン，ペーテル］ ［Ｔｅｒｒｉｎ，Ｐｅｔｅｒ］
１９６８年、ベルギーの西フランダース州ティールトに生まれる。１９９８年に短編集『ザ・コード』でデビュー後、発表作品が数々の文学賞にノミネートされ、評価を高める。２００９年に刊行した『守衛』ではＥＵ文学賞を、２０１２年刊行の『死後に』ではオランダ語圏の権威ある文学賞ＡＫＯ文学賞を受賞

板屋嘉代子［イタヤカヨコ］
国際外語専門学校英語ビジネス本科卒業。海運会社勤務を経て、１９９５年から２００１年までベルギーのアントワープに滞在する。帰国後フリーランスでオランダ語の実務翻訳に従事する傍ら、公益財団法人フランダースセンターのフランダース文学翻訳セミナー（２０１０年／２０１１年）に参加（本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです）
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感想・レビュー

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[星落秋風五丈原]

F1の整備士をしている男性が有名な美女を救った。メロドラマ調にしようと思えばいくらでもできるが、文章の通り淡々と進み、男性が美女と出会った時より不幸になっていく過程を描く。

2017/03/08

[きゅー]

女優を事故の爆発から守ったF1整備士。しかしマスコミはその瞬間を見過ごし、世間は彼を爆発に巻き込まれた一被害者としか見なさない。いくつかの偶然が重なり彼の不幸が始まる。妄想と現実、田舎と都会、有名と無名といった対立項が提示されるなか、彼は自分の望んでいない方を選択せざるを得ない。主人公含めて3人の主要な人物たちは「愛」の3局面を示している。望むところに愛情は訪れないが、無私の少年だけがその無私ゆえに愛される。

2024/05/14

[春ドーナツ]

フランソワ・オゾン監督の映画を観ているような、そんな小説。読者の解釈に大きく委ねられている、必要最低限以下の描写とか。物語の根幹に触れる文が、よそ見していると見逃してしまうような配置に溶け込んでいて、そこをサラリと読んじゃうと、自分の立ち位置というか方向感覚を見失うような。いかにもヨーロピアンな大人の小説という感じでした。

2017/02/06

[サイトー]

"あの時、美しく輝ける女性を助けた"という炎の記憶はまず彼の身体を焼き払い、そして"本当にあの人を助けたのか？"という猜疑心が魂を焼き尽くしていく。歯切れのいい映画的なカットで簡潔かつ残酷に語られる悲劇的な妄執の物語。これはいい。

2017/05/20

[Kubotan]

設定はおもしろいし、ドライな文章のスタイルもいい。ただ、途中で仕掛けられたプロットが、最後に一つの方向に収れんしていくのかと思いきや、やや散漫に流れてしまっているような印象を持った。また、中頃から文章の展開力というか、テンポが悪くなり、正直言って読み進めるのが苦痛になってきた。それがオリジナルの欠陥なのか、翻訳のせいなのかはわからない。

2018/06/01