内容説明
日本からブラジルに渡り、70余年。手強い大地・気候と格闘してきた老移民が、遠く離れた故国の言語で物語を紡ぐ。前作『うつろ舟』で話題を集めた著者による作品集第二弾。日系社会草創期に起きた駆け落ち事件の真相を探る表題作など、10超の短編を収録。
著者等紹介
松井太郎[マツイタロウ]
父貞蔵、母きよを両親として、1917年神戸市に生まれる。日本の国籍は今も保持。1936年、父の失業を機に、一家でブラジルに渡った。サンパウロ州奥地で農業に従事。一家は四年後には二五ヘクタールの小地主となった。第二次世界大戦、またその後の日本移民社会の動揺を大過なく切り抜ける。意見が合わなくなった父に勘当され、妻・子どもを連れて新しい生活を始める。過労がたたって病を得たが、気候のよいモジ・ダス・クルーゼス市の郊外に移り、病気から回復。妻と息子の働きによって、安定した生活ができるようになった。後日、息子がサンパウロ市に移り、スーパーマーケットを出したのを機に隠居。生来、文芸に親しんできたが、隠居後に創作活動を開始。年一作ぐらいの割で創作し、コロニアの新聞・同人誌に投稿を重ねてきた。現在もサンパウロ市に在住、なお創作活動を続けている
西成彦[ニシマサヒコ]
1955年生まれ。立命館大学大学院先端総合学術研究科教授。専攻は比較文学、ポーランド文学。著書に、『耳の悦楽 ラフカディオ・ハーンと女たち』(紀伊国屋書店、2004、芸術選奨文部科学大臣賞新人賞受賞)など
細川周平[ホソカワシュウヘイ]
1955年生まれ。国際日本文化研究センター教授。専攻は近代日本音楽史、日系ブラジル移民文化論。著書に『遠きにありてつくるもの 日系ブラジル人の思い・ことば・芸能』(みすず書房、2008、読売文学賞受賞)など(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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