フラバル・コレクション
厳重に監視された列車―フラバル・コレクション

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  • サイズ B6判/ページ数 118p/高さ 19cm
  • 商品コード 9784879843081
  • NDC分類 989.53
  • Cコード C0397

内容説明

1945年、ナチス支配下のチェコスロヴァキア。若き鉄道員ミロシュは、ある失敗を苦にして自殺を図り、未遂に終わって命をとりとめた後もなお、そのことに悩み続けている…滑稽さと猥褻さ、深刻さと軽妙さが一体となった独特の文体で愛と死の相克を描くフラバルの佳品。イジー・メンツェル監督による同名映画の原作小説。

著者等紹介

フラバル,ボフミル[フラバル,ボフミル][Hrabal,Bohumil]
1914‐1997。チェコの作家。ミラン・クンデラ、ヨゼフ・シュクヴォレツキーと共に、二十世紀後半のチェコ文学を代表する存在。モラヴィア地方の町ブルノに生まれ、プラハ・カレル大学で法学を修めたが、就職難のためいくつもの職業を転々としながら創作を続けた。共産党政権時代には検閲が厳しく、作品の多くが地下出版や外国の亡命出版社で出版された

飯島周[イイジマイタル]
1930年生まれ。東京大学文学部言語学科卒業。跡見学園女子大学名誉教授。専攻は言語学。2009年、チェコ文化普及の功績により同国政府より功労賞授与(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー

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nobi

84
モノクロ映画のよう。実際、駅の信号機のランプの赤と緑を除けば色彩の表現はわずか。ナチスに蹂躙されそのナチスドイツが敗退へと向かう時代の東欧の色彩に乏しい風景か。度重なる悲惨な光景は、交通職員見習ミロシュの本来の優しさを、即物的で乾いた表現の中に封じ込め、駅長が鳩を可愛がる様子も自らを傷つける様子も同じ調子で語る。世界を分節化するはずの言葉は一旦解体されて「厳重に監視された列車」が近づいてきて眼下を過ぎようとする、その規則的な振動音を立てている連結された貨車のように次々と現れて、最後尾の赤い光を残していく。2020/05/03

どんぐり

65
ナチスドイツに占領されたチェコの不穏な時代のなんともグロテスクな作品。電信員の娘のスカートをまくり上げ、尻のまわりに駅の公印を押す行為は何を意味しているのだろう。おかしさと卑猥さが悲劇的な出来事へと向かっていくボフミルの作品世界。欲を言えば、『わたしは英国王に給仕した』のように訳文がこなれていたらよかったのに。2014/04/11

zirou1984

54
ユーモアとシリアスが渾然一体となって押し寄せてくる、100頁ほどの中編ながらとても濃厚な小説であった。新米駅員である主人公ミロシュは初体験のチャンスにやらかしたショックで性の迷走を続け、情事に振り回される駅員たちの姿は滑稽そのもの。とはいえナチス占領下のチェコには不穏さが付きまとい、通り過ぎる列車に乗せられた家畜の視線は何かに抵抗している様だ。性の喜劇と政の悲劇、そんな両極端なモチーフを畳み掛ける様な文体でイメージを幾層にも重ね混ぜ合わせ、やがて1つの行為に結実されていくラスト。やはりフラバルは面白い。2014/04/03

Y2K☮

44
著者初読。舞台は1945年のチェコ。鉄道員ミロシュが「男になる」物語。文字通りの意味と皮肉が分かち難い。国土を冒すドイツ軍の戦車に催眠術で立ち向かう件に衝撃。勇気か無謀か。命が惜しいだけならナチスに服従し、腹の中で舌を出すか通風孔に叫ぶか家族に当たり散らせばいい。かといって覚悟も持たずに暴力に手を染めれば、その連鎖から他人事ではいられない。抜き差しならぬ状況と男になりたいミロシュの勘違い。男らしさをひけらかす人ほど案外小心者。そんな幻想に焦がれて利用されるよりも己を知り、身の丈にあった戦い方を模索したい。2016/03/17

かわうそ

42
戦争を背景とした過酷な生活や重く深刻なテーマと、ユーモアを交えたおおらかで饒舌な語り口とのアンバランスさが絶妙の味わいを醸し出す。淡々と突拍子もない行動に出る登場人物たちが魅力的だし、政治的テーマと結びついた若者の成長譚としても秀逸。非常に面白かったです。2015/04/07

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