内容説明
死と暴力に満ちたどうしようもない世界に、途轍もない言葉の力でたったひとり立ち向かう。2003年ロムロ・ガジェゴス賞受賞作。
著者等紹介
バジェホ,フェルナンド[バジェホ,フェルナンド][Vallejo,Fernando]
1942‐。コロンビアのアンティオキア州の州都メデジンに生まれる。父は有力な政治家。大学で哲学、そして生物学を修めた後、イタリアに留学して映画を学んだ。70~80年代にかけて3本の長篇映画を撮っている。少年時代を描いた『碧き日々』で小説家デビューし、その後も自伝的要素の強い作品が続く。1994年にはシカリオ物『暗殺者の聖母』を刊行。この作品が映画化された影響もあり、欧米など国外でも広く知られる作家となった
久野量一[クノリョウイチ]
1967年生まれ。東京外国語大学地域文化研究科博士後期課程単位取得満期退学。現在、法政大学経済学部教授。専攻はラテンアメリカ文学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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- 評価
魔術か?!覚醒か?!本棚
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Porco
16
呪詛の弾を打ち続けるコロンビアの小説。なんか圧倒されました。2019/07/28
かわうそ
12
語り手が回想を始めるとほとんど話が進まないうちにいつの間にか全方位に向けた憤りと罵倒に埋め尽くされていく。社会背景などの知識がないので真っ当な怒りとクズ野郎のたわ言の境目がわからないけれど、 呪詛の背後に見え隠れする哀しみは伝わった。2017/04/09
猫のゆり
8
全篇通じて呪詛に継ぐ呪詛。母国コロンビアへの、多産の母への、ローマ教皇への、貧困への、黒人への、生きることへの、混乱に満ちた世界そのものへの・・。全てに絶望し、唾を吐きかけるように投げかける言葉の一つ一つはその激しさゆえに、次第に裏返せば愛情の歪んだ形なのかと思えてくる。が、母親への憎悪は凄まじく、目を背けたくなる。父や祖父母、すぐ下の弟へは素直な愛情を注いでいるのに。病の悪化した弟が古いアルバムをめくり、表紙の写真が登場する場面では胸が詰まった。読みにくいのだが、読めてよかったと思った。2012/02/05
rinakko
8
“神と祖国なんてクソ喰らえ!” 表紙となった写真の、兄弟の可愛らしさに胸が締めつけられる。疾うに失われた姿なのに、つぶらな瞳にこの先映るものを思う。元はコーヒー、今はマリファナの国に堕ちたコロンビアへの、やり場のない憤り。命を縮めるほど夫をこき使い、子供達を引き離してきた“気狂い女”母親への憎しみ。唯一愛した弟を奪う病への、どうにもならない怒り。凄まじく迸る言葉の力でもって、罵って罵って罵りのめす。批難を募らせ憎悪を煽り立て。だが、終盤にきて不意に哀しみが伝わってくる。かつて愛があったからこそ、なのかと。2011/12/22
ハルト
6
あらゆるもの──生、死、母親、家族、国、神、性、自分自身も含む──への、愛するがゆえの罵倒と冒涜に満ちた作品でした。思考を垂れ流されているかのような文章は、その思考の強烈さゆえにカオス。すべてを否定するがゆえに成り立つ憤怒にまみれた愛。この小説を写真の天使のような少年が書いたのかと思うと不思議な気持ちになる。 2012/01/13
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