内容説明
異世界への誘い。小泉八雲、泉鏡花、夢野久作、ラヴクラフト、マッケン、ブラックウッド…妖しき魅力に満ちた「もうひとつの世界」の扉が開く―。
目次
第1部 幻想小説の境界(小泉八雲―怪談の背景;泉鏡花―魔界かな、いや現実だ;“異端の作家”の復権―『夢野久作全集』全七巻の刊行に寄せて ほか)
第2部 虚実の皮膜(覗き小屋の二つの窓;ゴシックの文学空間と環境;反世界とその圏域―キャロルとチェスタトン ほか)
第3部 飛花落葉(フリードリヒ・フーケ「ウンディーネ」;アルジャノン・ブラックウッド「とびら」;ウォルター・デ・ラ・メア「なぞ」)
著者等紹介
紀田順一郎[キダジュンイチロウ]
評論家・作家。1935年横浜市に生まれる。慶應義塾大学経済学部卒業。専攻の書誌学、メディア論を専門とし、評論活動を行うほか、創作も手がける。『幻想と怪奇の時代』(松籟社)により、2008年度日本推理作家協会賞および神奈川文化賞(文学)を受賞。2006年度より神奈川近代文学館館長(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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コットン
66
三部構成の幻想作家紹介と翻訳。第一部・第二部の中では第二部のラブクラフトの人となりを紹介しているのが面白かった。第三部の翻訳三編中、最後のウォルター・デ・ラ・メア『なぞ』が面白い。七人の子供が消えていく現象はホラーだけれど何か懐かしくも切ない感じが後を引く読後感でした!2017/08/05
HANA
19
幻想小説や怪奇小説についての随感、および翻訳。後書きや雑誌に発表されたものを集めた為、年代によってかなりの開きがある。読んでいるうちに乱歩を始めとする探偵小説や海外の怪奇小説が次々に読みたくなってくる。その渇きが頂点になったところに巻末の翻訳怪奇小説があるという有難さ。ただ「ウンディーネ」は内容が駆け足すぎてどうも食い足りない、が最後のデ・ラ・メアの「なぞ」は素晴らしい。全編にたたえられた詩情と寂しさが何ともいえなかった。2011/10/30
なる
18
小泉八雲や泉鏡花からはじまる幻想小説の系譜を紹介しつつ、彼らの作品に投影されているその背景を洗い出すという、割と真面目な研究本と言えるかもしれない。夢野久作、江戸川乱歩、小栗虫太郎といった個人的にはお馴染みの作家から、海野十三、平井呈一など知らない作家に興味が出てくる。国内だけでなく海外の作品も。ゴシックやホラー世界との共通項といった視点からも辿るのが面白い。取り上げる作家もルイス・キャロル、H・G・ウェルズ、H・P・ラヴクラフトと多岐に渡る。ただ偏差値が高めの単語が割と多くて、読むのに苦労する。2024/07/03
林 一歩
18
著者の翻訳物に慣れ親しんだ30年前の読書体験が現在の私を造り上げたと言っても過言ではあるまい。文庫あとがきや書評を寄せ集めたものだろうが、巻末デ・ラ・メアの「なぞ」に感動。これだけを読むためだけに購入しても良いと思う。2012/08/04
乃木ひかり
11
タイトルと表紙に惹かれて購入。評論集とは想定外で知識不足が露呈したが、その分いろいろ学べたと思う。アーサー・マッケンの傑作選が新装版で出ていた気がするので探してみよう。2022/07/05