ウンラート教授―あるいは、一暴君の末路

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  • サイズ B6判/ページ数 316p/高さ 20cm
  • 商品コード 9784879842558
  • NDC分類 943
  • Cコード C0097

内容説明

「ウンラート(汚物)教授」のあだ名で呼ばれる初老の教師ラート。ある日、生徒を追って夜の街に出た彼は、大衆酒場の若き歌姫に出会う。彼女とつきあううち、教壇の権威としての立場を忘れた彼は、社会憎悪の裏返しである破滅的愛を、彼女一人に注ぐようになっていく…。マレーネ・ディートリヒ主演映画『嘆きの天使』原作。

著者等紹介

マン,ハインリヒ[マン,ハインリヒ][Mann,Heinrich]
1871‐1950。ドイツの作家。戦間期、ヴァイマル共和国を代表する知識人として活躍。作家トーマス・マンは実弟にあたる。ナチス政権成立後、フランスに亡命。母国ではその著書は販売禁止となった。第二次世界大戦勃発後はアメリカに渡り、カリフォルニアで亡命生活を続ける。戦後、東ドイツの招きで帰国する予定であったが、直前に客死。代表作は『ウンラート教授』のほか、帝政下の臣民根性を痛烈に諷刺した長篇小説『臣下』など

今井敦[イマイアツシ]
1965年生まれ。1988年、中央大学文学部卒業。1991~1992年、ヴュルツブルク大学(ドイツ)留学。1993年中央大学大学院文学研究科博士課程を単位取得満期退学。1996~1999年、オーストリア政府より給付奨学金を得て、インスブルック大学に留学。1999年、インスブルック大学にて哲学博士(Ph.D.)取得。九州工業大学工学部准教授。ドイツ語・ドイツ文学専攻(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

長谷川透

15
汚物(ウンラート)教授と呼ばれるドイツの小さな街を舞台にした憐れ哀しき老教授の物語、と思って読んでいたのは数頁足らずであった。渾名に違わない糞教授だ。滑稽な渾名さえも目立たなくなる糞。偏狭偏屈の捻くれ者。教師の権威を盾に学校の子供に猛威を振るう。気に入らない者を罵倒し、従わない者を脅すだけでは物足りず、実際に社会の奈落に突き落とす。世に蔓延る劣悪な教師のイメージの権化とも言うべき糞。物語の半ばを過ぎて、汚物は狂気の果てに街さえも荒廃させていく。これだけ人間性が糞な男が狂ったらどうなるか想像は容易いだろう。2013/11/14

syaori

13
面白いです。生徒を落第させる機会を窺っている、ウンラート(汚物)と呼ばれるラート教授が主人公です。わがままな子供がそのまま大人になったような教授が女芸人に入れあげて破滅するさまが諧謔的に描かれます。この暴君の末路がある種の悲劇性を帯びるのは、教授をはじめとする登場人物たちの複雑な心理描写によるところが大きいのではないかと思います。これによって物語的には単純なこの小説が複雑に、魅力的なものになっているように感じました。教授が目の敵にしていて、この悲劇の重要な役割を担うローマンの存在感もよかったです。2016/02/25

rinakko

11
素晴らしい読み応え。汚物(ウンラート)教授とは凄まじいあだ名だ…と思い、読めば内容の凄まじさにきっちり釣り合うので感嘆した。57歳までの人生を学校のうちで過ごしたウンラートは、年長者の視点を持たず、生徒を憎しみで処罰するまさに独裁者だ。常に戦闘態勢でいる彼にとって、町中の元生徒たちさえ敵のままだった。と、そんな教授の境遇は女芸人ローザとの出会いによって激変するわけだが、何ていうか、本人の軸は決してぶれなかった。邪悪な生徒どもへの憎悪を町中に押し広げ、人類に罰を与え絶滅させるという壮大な志に邁進する。2018/07/27

ワッピー

8
町中の嫌われ者ラート教授(通称:ウンラート=汚物」が、自分の生徒を監視するという口実で、街にやっていた踊り子ローザ・フレーリヒと出会ったとき、世界は変容する。堅物で自分の専門に閉じこもっていたウンラートは、毎晩ローザの楽屋に通いつめ、ついには結婚に至る。ローザを得たウンラートの家は町のサロンと化し、それまでろくに娯楽のなかった町は享楽的な雰囲気に包まれる…ウンラートの興隆と破滅は、喜劇的人物が、ローザへの愛と自分の復讐心に身を裂かれつつ、堕落して悲劇の主人公へ昇華していく見事な変わり身でした。2018/10/17

きゅー

7
すばらしい!最初は笑えることこの上ない。だって、こんなに最低の教師見たことないもの。気に入らない生徒を小馬鹿にし、嘲笑するのが趣味のウンラート教授。普通の小説だったら、こんな教師にいじめられる生徒を主人公に持ってくるのにその逆を行くとは!中盤までは、ウンラート教授の意地の悪さに苦笑しながら読み進んだ。しかしある時点から突如、物語が私を捕えた。性格が悪いとしても、それ以上何者でもなかったウンラートが変貌し、病んだ精神をもって破滅の中心に居座り、君主のごとく人々を睥睨する。2011/03/27

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