内容説明
昭和十八年十月、戦場へ赴く出陣学徒を見送り、次は自分たちの番だと覚悟した昭和一桁生まれの世代は、敗戦とともに新旧大転換時代の空白の谷間で立ち往生することになる。軍国主義的教育を受けて育ったこの世代は、年齢も中途半端なら物事の分別も未熟そのもの。さらに大人たちへの不信感も強く、そんな条件下、若者たちは暗中模索でそれぞれ羅針盤のない小舟をこぎ出し、漂流漂着を繰り返しつつ、自分の人生を探すのである。本書は、それら自分たち史の航跡でり回答でもある。
目次
1 出陣学徒を見送った世代(高揚する雨中の出陣学徒壮行会;隣組の無償家庭教師;慌ただしい学徒兵死地への出征 ほか)
2 半戦中派のサラリーマン生活(「母さんほんとにごめんよ」;生活を支えた失業保険金;同世代社員四人の新会社 ほか)
3 政経雑誌社の中の半戦中派(「政治評論家」社長との面接試験;武藤貞一という名の人物;銀座進出の仮祝い ほか)
蝙蝠傘
著者等紹介
山本保之介[ヤマモトヤスノスケ]
昭和4年(1929)1月東京生まれ。昭和23年東海科学専門学校(東海大学の前身)電気科卒業。昭和26年旧制中央大学経済学部卒業。農業関連会社勤務後、政治経済誌『動向』、経済誌『アジア経済』の編集記者を経て、東京時計株式会社宣伝課長。昭和46年編集センターを設立。昭和51年より平成5年3月まで東海大学出版会において編集責任者を務める。同時代史学会会員。昭和34年読売新聞第15回短編小説賞に入選(選者・大岡昇平)
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