感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
松本直哉
28
シュルレアリスムの旗手という紋切り型で語られる詩人だが、通読後の印象は、むしろ孤高の神秘主義とでも形容したくなる。中年になってからカトリックの洗礼を受けて後半生を修道院で送り、エリュアールら盟友が政治的に参加する詩を書く大戦中も、世の中から隔絶して創作した彼の詩は、宗教的観念があからさまに表現されることはないものの、異質なイマージュの結合を通じて、超越的な何かを幻視する試みのように思える。特に「奇跡」「言葉が降りる」。前者はベタニアのラザロ、後者は聖霊降臨を連想した私の読みは間違っているだろうか。2021/06/15
H2A
14
ルヴェルディは20世紀の詩人としてはフランスで有名な存在だが、日本ではそれほど紹介されていない。今回、月曜社から新装版として新たに再刊されたのは喜ばしい。代表作から過不足なく取り上げられボリュームもほどよい。集中して一気に読んで難解なフランス語が、頑張れば手の届く日本語になっている。翻訳もよいと思う。今回は解説も注もあっさりとしていて、かえってルヴェルディの世界を知るのには好ましい。これを機にこの詩人が言葉の分厚いカーテンを超えてもっと紹介されてくれればと願う。2021/06/11
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