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密告

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  • サイズ B6判/ページ数 213p/高さ 20cm
  • 商品コード 9784878933608
  • NDC分類 953
  • Cコード C0097

内容説明

ある日偶然、著者は、自分の親戚一家をアウシュヴィッツに送り込んだ「密告」の手紙を発見した。それを書いたのは、近所の人のよい老婦人だった…。真実を追い求め世界で高い評価を得ている伝記作家が、ノンフィクションとしては書けない事実にぶつかってしまった。そして、初めて小説として書き上げたのが本書である。舞台は、パリ15区の一角。1軒の商店と1軒のビストロ、そして教会と1台のバスの中だけ。彼の追及は、占領下パリの「亡霊」を呼び起こし、平安に暮らす人々の過去の傷口をえぐりだしてゆく…。誰も書けなかった、ナチ占領下のパリの闇。『朗読者』とともに各国で話題騒然のモデル小説。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

新地学@児童書病発動中

71
ナチ占領下にあったフランスの暗闇を描く小説。ノンフィクション作家で作者の分身と言える男性が主人公。親戚をアウシュビッツに送り込んだ手紙を書いた人が身近なところにいたことを発見し、調査を開始する。主人公を真実を追求するヒーローにしなかったところに、作者の誠実さを感じる。偏執狂的に手紙を書いた女性に迫る主人公は自らも傷を負う。その傷の深さがナチスとユダヤ人問題の深刻さを浮き彫りにしているような気がした。日本人にはなじみの薄い社会的な問題を、巧みなストーリーテーリングの中で教えてくれる良書。2013/06/21

星落秋風五丈原

22
ノンフィクション作家である主人公は、鏡の光を彼女にあてようとしたり、衆人環視のバスの中で糾弾したりと、単に「真実を追求する使命感」と言いきるには常軌を逸した行動に出る。ここに至り「主人公が行き過ぎだ」と感じる読者もいよう。政治思想もユダヤ人嫌悪も特に抱いていなかったセシルが密告した理由が明かされると彼女に対する同情は深まる。本当に責められるべきは密告を強いた国家だ。邦題ではタイトルが「密告者」ではなく「密告」という行為に訳されているが原題は『得意客La Cliente』と特定の個人をはっきりと指している。2015/09/21

きりぱい

9
ナチ占領下のフランスを調べる中で、親戚が収容所に送られる引き金となった密告の手紙を偶然発見してしまった著者。ノンフィクションとして発表することには二の足を踏むが、シュリンクの『朗読者』に出会ったことで、小説の形で踏み出されることになる。真相を知る方がいいのか、沈黙が生きる方法なのか、新たな傷をえぐり出す「私」の執拗さは気分の良いものではないが、誰もが被害者になりうる戦時下にあって、警察の抜け目ないやり方や、何を守りたいかを思うと、密告者をただ下劣で弱い人間ということができない。2010/08/20

4
妻の親戚一家がアウシュヴィッツに送られるきっかけとなった手紙を発見したことから、当時の深層を究明することを決意する。隣近所で密告をしなければならなかった残酷な過去の葛藤、それを完全に忘却の彼方に押しやった現代社会への疑問の投げかけ。私小説のように「私」の立場から歴史・社会に迫っていくのはオートフィクションの先駆け。ノンフィクションの過程を小説的な形式で発表したことで、歴史再検討の作業に読者が積極的に関わることもできる。遠い国日本でも第二次大戦の傷跡は深く残っており、ユダヤ人・フランスの他人事だと思えない。2010/12/03

amorlibresco

2
初め、語り口が好きになれなかった。翻訳のせいもあるかもしれない(し、先日小尾芙佐訳の『ジェイン・エア』と『高慢と偏見』を読んだばかりという影響も大きいかもしれない)。ただ読み進めていくと、この暗く曖昧な(obscurな)語り口は、語り手の偏執狂的な行動にだんだん似つかわしく、はまっていくのだ。やがて結末が近づくころには、誰も断罪できないという重苦しい悲しみだけが残る。語り手の立場を良くも悪くも温存してしまうノンフィクションではなく、虚構の語り手を設定することで初めてこれを書きえたという意味がよくわかる。2013/04/20

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