内容説明
『24人のビリー・ミリガン』にも「権威」と紹介される精神科医が多数の症例をもとに描く、多重人格者たちの実像とその心の内側の不思議な世界。
目次
第1章 多重人格者と出会うまで―精神科医としての修業時代
第2章 生きることを選んだジャネット―治療の成功例
第3章 死ぬことを選んだキャリー―治療の失敗例
第4章 心の不思議な働きを探る―人はどのようにして多重人格となるのか?
第5章 多重人格者の心の中をのぞく―「内部の自己救済者」と想像を絶する内部世界
第6章 人格同士の最後の熾烈なる闘い―多重人格の「統合」
第7章 凶悪犯罪と多重人格―刑務所で発見される“男性患者たち”
第8章 「憑依」と「霊」の世界―多重人格とエクソシズム
第9章 心の中の未知なる世界―残された課題
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
夜間飛行
59
患者を死なせた自責の念がずっと著者を苦しめながら導いていくように思われた。最初の患者ジャネットはインナー・セルフ・ヘルパー(ISH=自己救済者)の出現と共に快方に向かうが、次の患者キャリーは悪の人格に乗っ取られ自ら死を選ぶ。当時は多重人格性障害の症例が少なく、ワラをもつかむ思いで《悪魔祓い》を試みた著者を責められない。破壊的人格から患者を守るISHは、誕生前のもめ事まで知っていたりするので、著者はISHの情報と援助を受け入れ始める。そんな折、霊の憑依としか思えないケースに遭遇し、ISHもそれを霊と認める。2017/05/25
wildchild@月と猫
27
多重人格者を実際に診療した精神科医の見た、奇妙で不可思議な患者達の世界。本当にこんな事が実際に起こり得るという事実に驚き。人間の脳とは、何故このような事象を可能にするのだろう?余りに巨大な大脳新皮質を持つ生物へと進化した代償なのだろうか?人間の理性などちっぽけなもので、実際には爬虫類の脳と言われる、情動を司る大脳辺縁系という古い脳に、今も強く支配されているのではないかと感じる。脳の世界は深海のように、いまだ深くて暗い闇に閉ざされている。2014/10/29
アブーカマル
4
現在の精神医学ではMPD(多重人格)ではなくDID(解離性同一性障害)と呼ぶらしい。宗教と精神医学は見かけほど矛盾するものではない。かつては教会が精神の病に対処してきた。(p.97)オリジナル人格と否定・攻撃的人格を仲裁する救済者人格と生まれる以前の記憶を引き継ぐ内的自己。神を知覚し、非常に強い善悪の感覚を持ち、諸人格から独立した存在。これは個人の教養とは関係がない。ISH(innerselfhelper)内部の自己救済者。五つの類型以外にもいくつかの類型化を試みている。2016/09/27
holo
1
SF以上。文章は小気味好く読みやすい。凄惨な極限状態からの人格隔離という点で、『ハーモニー』を思い出した。ISH《内部の自己救済者》に驚き。神が存在する所以が私たちの中にある、ということだろうか。2024/06/07
may
1
よい2015/11/14