内容説明
ラヴクラフト・マニアの恋人と共に工事現場の陥没穴に入りこんだダニイが体験した恐怖を描く「闇のプロヴィデンス」。ミスカトニック大学に勤めるスコット・リントン博士が別人のように変わっていく妻の姿に怯える「点を結ぶ」。悪名高い怪事件が今も息づくダニッチを訪れたコーディーリア・ウェイトリイが目撃した惨事を描いた「ダニッチの破滅」など、十五篇を収録。ラヴクラフトが描いた街々を、現代の作家と共に再訪する珠玉の短編集、待望の全訳が登場。
著者等紹介
大瀧啓裕[オオタキケイスケ]
1952年、大阪市生まれ。翻訳家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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眠る山猫屋
52
ラヴクラフト・カントリイ。なんて素敵な言葉なんだろう。ラヴクラフトが生活した、或いは物語の舞台とした土地。そこで起きる数々の怪異を描いたアンソロジー。玉石混淆だが総じて楽しめた。初見の作家が多く、クトゥルー神話とは言い切れない作品もあるが、意気込みのようなものは伝わってくる。都会から車で一時間程度の距離に埋もれた町、誰も立ち寄らない深い森、そんな場所が実際に在りそうで、物語の舞台は今尚創り得るのだなぁ、と感慨。こんな良質なアンソロジーに気づかなかったとは。再開の噂のある異形コレクションでもやらないかなぁ。2020/10/03
マサトク
5
500ページを超える大著である、ともいえる。さまざまな角度でラヴクラフト神話を描いているが、基本はオーソドックス。守旧派としては嬉しい。解説に「大輪の花」とまで言われているけど、なるほどクォリティの点でも目を瞠るべきものがある。田舎町の奇祭を描く「ハーレクインの最後の祝祭」、地図にない街に迷い込んだセールスマンを描く「裏道」、LSDでシュブ=ニグラスに通じてしまう「タトゥル」、等々、TRPGネタに使えそうなものも多くある。良品。2021/12/13
Kotaro Nagai
2
ラヴクラフトの世界をテーマにしたアンソロジー。ダニッチ、ミスカトニック大学などラヴクラフト・ワールドが楽しめる。2011/04/11
アル
2
クトゥルー関連の新し目の作品を読みたい、と思って再読。新刊で出た当時に通読したきりだったのでかなり楽しめた。古めの神話作品と比べると、生理的な気持ち悪さの表現が「今風」に感じられる。 初読の時も思ったが『コロンビア・テラスの恐怖』の主人公、ちび・デブ・ハゲと三拍子揃った四十男なのに、何でこんなにかっこいいんだろう。2013/04/19
koutaquarter
2
やめときゃいいのに沼地に分け入り気づけば首まで泥の中。全集を読んだのはもう十数年前なのでいまいちぴんと来ないものもあったのだけれど、ラヴクラフトの身も蓋もない雰囲気や逃げる勇気を持てないままに自ら破滅へ絡め取られていく人物たちの哀れさなどを、ある種の懐かしさを感じながら味わった。唯一勝っちゃう『コロンビア・テラスの恐怖』がむしろ異色なのもラヴクラフトものらしい。どれも訳はあまり巧いとは思えないが、それもまあ味といえば味か。最後におまけで載ってる訳者ご自慢の『クトゥルーの胸像』の写真は見事に禍々しくて素敵。2012/05/12