内容説明
『火ノ刺繍』は、『根源乃手―余滴』、吉本隆明氏に献じられた書物の続篇として編まれ、歴然とふたつの時間軸が存在している。ひとつは、二〇〇八年から二〇一七年の十年間に、吉増剛造が書き残してきたテキスト、全九一篇。もうひとつは、二〇一一年二月から二〇一二年二月までの一年間、毎月二二日に撮影された吉増剛造の肖像写真。幾重にも襲ねられ、幾度も織られていく、意識と存在の根源から生まれたタペストリーともいえる書物、『火ノ刺繍』。特筆すべきは、本書のために書き下ろされた、詩篇「火ノ刺繍―永遠の旅人Afanassievに」(仏訳も収録)。声の「マ」から「魔」へ、吉増剛造の新たな次元を予感させる詩篇が奇蹟的に書かれたことで、このいまだかつてない“愛の書物”が誕生した。
目次
声書き(モノローグ 詩の瘤を掴む手―貘からの新しい光(山之口貘)
モノローグ 母音の洞穴からなにかが聞こえてきていた(飯島耕一)
モノローグ 宇宙の「メーロス」に運ばれて(シェイマス・ヒーニー)
インタビュー 声ノ蜃気楼
(ミモザの花に、…)隠れた詩人(大手拓次) ほか)
手書き(ワガココロフルクハアレド;ユ―雅ハ、ト、トワッ、レッテ、ルビ―仁、カタリッ、カケタ;火ノ刺繍、Okinawanン’s,Filmン’s、火の刺繍。;大里俊晴ノ天使の羽撃き…;井上輝夫追悼―獅子の首の野の花 ほか)
著者等紹介
吉増剛造[ヨシマスゴウゾウ]
1939年東京生まれ。詩人。慶應義塾大学文学部卒業。大学在学中から旺盛な詩作活動を展開、二十四歳のとき詩集『出発』でデビュー。以後先鋭的な現代詩人として今日に至るまで国内外で活躍、高い評価を受ける。朗読パフォーマンスの先駆者であり、現代美術や音楽とのコラボレーション、多重露光の写真、映像作品など活動は多岐にわたる。主な詩集に七〇年『黄金詩篇』(高見順賞)、84年『オシリス、石ノ神』(現代詩花椿賞)、90年『螺旋歌』(詩歌文学館賞)、98年『「雪の島」あるいは「エミリーの幽霊」』(芸術選奨文部大臣賞)、08年『表紙omote‐gami』(毎日芸術賞)など(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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