内容説明
たとえば学校や書物を通して獲得した知識は、そのままでは、各人が人生でぶちあたっている切実な問いとは関係がない疎遠なものにとどまるが、それらを「経験」という回路を通過させると、生きるための知恵となる。ベンヤミンは、ナチスが政権をとったヨーロッパで「経験の貧困」を指摘したのだが、「経験」として伝えられていたことが、通信技術の発展によって「情報」として流通し、あっというまに消費されてしまっている現代社会では、事態はもっと深刻ではないか。本書の著者、鹿島徹はこのように言う。どうしたら「経験」を復活させることができるのか。本書は示唆する。鍵は、歴史にある、と。哲学と対話する歴史に、である。
目次
1(「世間」論の意味するもの―阿部謹也氏との対話;網野善彦『無縁・公界・楽』)
2(同時代診断としての「現在主義」―フランソワ・アルトーグ『歴史性の体制』をめぐって;歴史とはなにか―歴史学研究会に宛てて;「物語」の解体と動態的再生のために―物語研究会との対話;劇団May「夜にだって月はあるから」)
3(「哲学」の終焉と「フィロソフィア」の課題)
著者等紹介
鹿島徹[カシマトオル]
1955年生まれ。テュービンゲン大学哲学部博士学位取得。現在、早稲田大学文学部教員、哲学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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