内容説明
「戦争放棄・軍隊不保持」を謳う九条を是としながら、私たちはこれまで、歴代政権が進める再軍備のための解釈改憲を「大人の知恵」として受け容れてきた。その欺瞞を明らかにするとともに、国民投票での決着を提言する。
目次
第1章 乖離する九条の本旨と実態(憲法制定直後からあった自衛戦争論争;小泉首相が指摘した「欺瞞性」 ほか)
第2章 解釈改憲=大人の知恵(曖昧を通す「九条の会」;「大人の知恵」とは ほか)
第3章 なぜ「大人の知恵」だったのか(連合国総司令部(GHQ)と極東委員会(FEC)
GHQ主導の憲法草案作り ほか)
第4章 「解釈改憲」の始まり(朝鮮戦争が解釈改憲に舵を切らせ、「警察予備隊」を誕生させる;一進一退の攻防 ほか)
第5章 欺瞞の殻から脱して道理ある道へ(九条の解釈合戦はもうやめよう;国民投票での決着を求める声が広まりつつある ほか)
著者等紹介
今井一[イマイハジメ]
1954年生まれ。ジャーナリスト(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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うさこ
10
今井一氏のいうことは何十年経っても決してブレない。この本では何故憲法九条が実際に書かれている言葉と違う意味に解釈されてきたのか、実際に書かれている九条の意味を国民は理解しているのかを問うている。「戦争放棄」を謳うのは容易いが”攻められたらどうする?”の答えを考えている国民がどれほどいるだろうか。自衛隊の問題も九条とともに避けられない。憲法では「陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。」とある。2016/04/17
西村章
1
つねづね、いわゆる「護憲派」の欺瞞にも「改憲派」のご都合主義にも、ともに度し難い不誠実さを感じていて、なにより国民投票について勉強してみたかったので、まずは書店でみつけたこれを読んでみた。日本国憲法成立以来の解釈改憲の歴史を概括しながらページが進み、最終章で望ましい国民投票のあり方を提案するという章立てなので、既知の事柄や知らなかったことなどを整理するためにはコンパクトでよくまとまっており、自分の考えを改めて整理するという意味でもとても参考になった。2018/01/27
並河 秀憲
0
この本を読めば、敗戦の翌日から今日まで、すこしも痛みを記憶せず、軍備を欲し続けた愚昧なわたしたちを確認する事ができます。夥しい死によって終止符が打たれた戦争でした。だから人々は戦争放棄を喜び、世界に率先して軍備を持たない事を誇っていたと私は思い込んでいました。しかしこれは幻想でした。記載された調査によると、戦後一貫して軍備を望む人が、これを望まない人を上回っていたのです。この本は事実によって伝えようと腐心されています。資料を追うだけで問題点が浮上します。思い込みが是正されます。
takeapple
0
竹ノ塚図書館でのビブリオバトルで使った。今、安保法制が国会で審議されているし、集団的自衛権は違憲だという声を聞く。確かにその通りだと思うけれど、じゃあ個別的自衛権は、どうなの?そもそも日本国憲法がどうやって成立したか、その後第9条を巡る世論はどう変化したのかを新聞報道により跡付ける。立憲主義とは何かとか、具体的にどうすればいいのかを予備的国民投票という事例をあげながら説明する。解釈改憲は、護憲派だってやっちゃいけないとよくわかる。市民社会への信頼が大切だと思った。2015/08/17