国際難民法の理論とその国内的適用

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国際難民法の理論とその国内的適用

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  • サイズ A5判/ページ数 241p/高さ 22cm
  • 商品コード 9784877982683
  • NDC分類 329.21
  • Cコード C3032

出版社内容情報

難民法の歴史から日本での認定手続における問題まで、難民保護の観点から体系的に論じる初の専門書。あくまでも現実のケースを念頭に実務で使える理論構成となっている。

序章 難民保護問題の全体構造
1 問題関心
2 問題の範囲と考察視点

第1章 難民保護原則の展開に関する史的概観とその展開に見られる構造的特質
1 フランス革命から第1次大戦まで
(1) フランス1793年革命憲法上の政治的庇護原則
(2) 19世紀における政治犯罪人不引渡原則の普及とその法的性質
(3) 19世紀末のトルコおよび帝政ロシアからの大量難民流出と西欧諸国の無反応
2 国際連盟期の難民保護問題
(1) ロシア難民保護制度――国際難民保護制度の始まり
(2) ユダヤ人難民保護制度の挫折
3 国際連合下における難民保護制度の限界とその超克
(1) 世界人権宣言上の庇護原則をめぐる論争
(2) 難民条約における制約と進展
(3) 領域内庇護宣言に見る各国の主権への固執
(4) 国際人権規約およびその他の国際人権諸条約による国際難民法進展への刺激
(5) 歴史的概観の小括

第2章 難民保護の意義とその特性
1 難民庇護の法的本質に関する概説
2 領域性をめぐっての難民庇護と人権保護の重なりと乖離
(1) 領域性から見る難民庇護と人権保護の関係
(2) 人権の国際的保障から見る難民保護の限界
(3) 領域性ゆえの難民保護の問題点
3 迫害概念と人権侵害概念
(1) 迫害概念と人権侵害概念の間の重なりと乖離
(2) 人権侵害に対する国家の保護のあり方と迫害概念
4 保護決定要因の観点から見る難民保護の特性
(1) 迫害への恐怖という主観的・心理的要素の評価
(2) 迫害のおそれに関する予測(prognosis)に関する時間的要素と蓋然性基準
(3) 第三国における滞在と第1次庇護原則(または第2次庇護否定原則)の関係

第3章 難民条約の意義とその適用上の問題点
1 難民条約の意義とその適用における動揺
(1) 難民条約への関心の重心
(2) 難民条約の意義と国際政治的側面から見るその動揺
2 難民条約規定上の枠組みに欠けている原則に対するUNHCRによる穴埋めと各締約国にとってのその意味
3 難民条約の国内適用上の実際と問題点
(1) 問題の焦点
(2) 各国における難民保護の段階的手続と難民条約に定める枠組みの対応
(3) 各国の難民認定手続とUNHCRの関わり
(4) ノン・ルフールマン原則とその限界
(5) 難民認定に至るまでの各段階における出入国管理上の処遇と難民条約規定
4 日本国の難民法およびその改正方向に見る問題点
(1) 日本国の難民法の特色
(2) 2004年改定入管法の問題点

第4章 難民資格認定過程における諸問題(1)――事情聴取と先決的却下を中心にして
1 難民資格認定過程における基本的な問題点
2 認定に関わる事実関係の解明に適用されるべき原則とその運用
(1) 事実関係解明の重要性
(2) 事情聴取における認定申請者の説明責任と認定機関の対応のあり方
(3)  認定機関が担うべき事実関係解明の原則とその責任範囲
(4) 事実関係に対する評価のあり方
(5) 事情聴取手続における申請者の手続代理授権者の役割
3 「明らかに理由がない」か否かに関する先決的審査とその決定
(1) 「明らかに理由がない」という理由による申請却下と各国における意義
(2) 「明らかに理由がない」という条件の個別具体化とその運用
(3) 「明らかに理由がない」という条件に関する個別的基準とその運用
4 難民資格審査における立証と信憑性判断
(1) 難民認定における立証責任問題と証拠手続から見るその問題の特異性
(2) 蓋然性判断の根拠としての信憑性判断
(3) 立証基準――証拠全体から判断される蓋然性の程度

第5章 難民資格認定過程における諸問題(2)――迫害概念の適用問題
1 迫害概念とその適用上の進展
(1) 「特定の社会的集団の構成員であること」という理由を手がかりとする迫害概念の拡大適用
(2) 難民条約上の迫害概念と女性難民
(3) 難民条約上の迫害概念と子ども難民
2 迫害への国家機関の関わり方と国家の責任
(1) 迫害への国家の関わり方に関する概観
(2) 無許可出国を原因とする迫害のおそれの場合に見る国家の役割
(3) 兵役拒否を原因とする迫害のおそれの場合に見る申請者個人の主張と国家の関わり
3 国家機関の直接的行為から距離のある人権侵害と迫害
(1) 間接的迫害
(2) 準国家的迫害
(3) 破綻国家状態と迫害のおそれ
4 その他の若干の主要な類型の迫害
(1) 政治犯罪の理由による訴追
(2) 宗教的迫害
(3) 対集団的迫害
5 内戦状態における迫害の場合の国内避難選択可能性(internal flight alternative)
6 本国逃亡後または他国滞在中の後発的事由に対する評価
(1) 後発的事由に対する評価に関する一般的原則
(2) 自ら作り出した後発的事由を理由とする申請に対する評価
(3) 潜在的危険状態からの避難――難民資格認定申請提出を理由とする迫害のおそれ
(4) 説明責任の範囲

第6章 大量難民保護問題への国内法上の対応
1 大量難民問題の、国際難民法の側面から見る特性と難民条約との関わり
(1) 大量難民問題の特殊性
(2) 難民条約規定における大量難民問題への関わりとその適用実際上の限界
2 大量難民問題に対する国内的対応
(1) 概観
(2) 大量難民問題への国内的対応における難民認定問題および出入国管理上の問題――ドイツとフランスの場合

まえがき
 本書は、難民認定問題とその認定手続に必ず付随する認定申請者の入管法上の処遇問題を、それらの問題に関する国際法原則の国内的適用という側面から考察したものである。
 本書が、法律実務に関わっている専門家諸氏に読まれることを願っていることはもちろん、難民問題や人権問題に関心を持ち、またはこれから関心を持とうとする人々に広く読まれることを期待している。
 日本の難民法制に数々の欠陥があることは、ことあるごとにクローズアップされてきた。そして遅々としてではあったが、ようやく部分的な手直しが実現された。しかしその手直しはわずかの部分であり、それ自体に意義がないわけではないにしろ、肝心な要点から外れている。本書では、何よりもまず、日本の難民法制の主要な部分における問題点をどのように見るか、という論点を念頭に置きながら、その論点を考えるための基礎的理論として、難民保護制度とその運用において先進的な諸国の経験則に着眼している。
 それらの経験則は、国際難民法の基軸といわれる難民条約の、規定の文言どおりの適用に関するものにとどまらない。欠陥だらけの難民条約を、むしろ活かす方向で新たに考案された多くの法原則や基準を含んでいる。しかも、新たな考案の際、常に基点となったのは人権保障原理であって、時として揺れ動く単なる人道主義理念ではなかった。
 諸国の経験則のなかでも、本書では、ドイツのそれに比重を置いた。ドイツは難民保護を憲法上の人権保障体系に取り込み、それゆえに難民認定申請者の殺到または認定手続濫用者の激増に苦しみながら経験則を積み上げてきたからである。しかし、ドイツの経験則にかぎらず、問題点次第では他の諸国の経験則にも視線を広げた。
 以上の考察の成果に筆者は理論編と意味づけることを意図している。というのは、筆者は、本書で紹介し、検討した諸国の経験則を利用して、以後、その観点から、日本の判例を中心とする諸経験を評価しようと思っているからである。日本の行政府・司法府の中だけで通用する観点だけでは不十分である、と考えている。ただし、その評価作業の成果を発表できるのは、数年後の学園生活終了後になるであろうし、老骨の身に鞭打っても私の能力が続くかどうかにかかっている。

 本書の研究にあたって、諸先生や法律家の皆さんから多くの示唆をいただき、難民支援協会の皆さんから資料等の支援をいただいた。また、研究費の一部を法政大学2003年度特別研究助成金として補助していただいた。心から感謝申し上げる。

2005年初夏  武蔵野の寓居にて   本間 浩