出版社内容情報
「現場からの司法改革」を訴えてきた裁判官が、裁判所の現状を明らかにしながら、裁判所改革の到達点を分析し、今後の課題を提案する。現職裁判官の単著としてはじめての書。
序 章 「下からの」司法改革
はじめに
この本の読み方について
第一章 裁判所のイメージアップのために【裁判所CI作戦】
第二章 二一世紀の裁判官を育てるために【判事補研修制度改善の提言】
第三章 裁判所の組織、組織文化の改革のために【裁判所リストラ作戦】
第四章 令状審査の活性化と公開化のために【令状審査の問題点と改革の課題】
第五章 夜間の令状執務体制の確立のために【宿日直制度、特に宿直制度の将来像】
第六章 二〇一〇年「裁判官意識」は変わり始めている
◆裁判所CI作戦
第一章 裁判所のイメージアップのために
一 問題意識
二 裁判所のイメージアップの方法論
三 裁判所のイメージアップの具体策
四 裁判所のCI作戦を進めるために
◆判事補研修制度改善の提言
第二章 二一世紀の裁判官を育てるために
一 はじめに
二 裁判官研修制度
三 現在の判事補研修に欠けている視点
四 これからの判事補研修
五 判事補研修を発展させるために
六 最後に
◆r> 四 宿日直制度の将来像について
五 今考えるべきことは何か
◆木佐論文「二〇一〇年の裁判所・裁判官」を読んで
第六章 「裁判官意識」は変わり始めている
一 二〇一〇年「目をお覚まし 私の魂」
二 制度改革の行方は?
三 不安要因は何か
四 さあ、「大道」をゆかん!
◆付録――二〇一〇年の裁判所・裁判官(木佐茂男論文〔月刊司法改革二〇〇一年九月号〕転載)
一 裁判所・裁判官改革のキーワード
二 裁判所の雰囲気は
三 裁判官増員と弁護士任官
四 判事補制度
五 裁判官人事の透明度は
六 最高裁事務総局と司法人事行政
七 司法行政の分権化と国民参加
八 まとめ
終 章 平成司法改革の到達点
平成司法改革の成果
論文の内容はどの程度実現したのか
今後の裁判所はどうなるのか
◆刊行に寄せて
過激な裁判官論を秘めた裁判官……毛利甚八
はじめに
「浅見は裁判官人生を捨てるのか」
私は、裁判官になって六年目(一九九三〔平成五〕年)から、現場の一裁判官として、本書に収めている論文を判例時報という法律専門誌に掲載し、ささやかながら、日本の司法が変わらなければならないことを繰り返し訴えてきました。そのときに、右のような声を先輩の裁判官が口にされているのを耳にしました。今はそんなことをいう裁判官はおそらくおられないと思います。当時は、論文の刺激がきつすぎたのかもしれません。
今や、一九九九(平成一一)年に設置された司法制度改革審議会によって方向性が定められた平成司法改革は、裁判員制度をはじめとして、諸種の分野での立法化の作業をほぼ終わり、運用の段階に入りつつあります。平成司法改革は、①内容が多岐にわたり、司法における根本的な改革も多数含まれていること、②司法の利用者や国民の視点を中心に沿えた改革であること、③内閣に司法制度改革推進本部が設置され、裁判官、検事、弁護士のほか、学者や民間人も参加して、改革の具体案が練られたなど官民挙げての改革となったことなどからして、歴史に残る大改革、おそらく、明治の近代的司法の草創期の改革、GHQ指導下での戦後た時代に生きられることを心からうれしく思っています。
本書は、一裁判官として、私が司法改革を訴えた私の初期(一九九三〔平成五〕年から一九九五〔平成七〕年まで)の論文を主としてまとめたものです。現場の裁判官からでも、こうした司法改革の動きがあったことを理解していただくには、格好の材料と思われます。また、これだけ大きな動きとなった平成司法改革ですが、私の主張からすると、実現したものも確かに多いのですが、残念ながら改革がまだ十分ではない分野もあることに気づかれるでしょう。根本的な改革は、平成司法改革で決して終わりであるべきではありません。これからも発展すべき司法改革であるべきだと思います。そうした意味で、どの分野の改革が十分ではないのかご理解いただくには、本書を出版する意義は決して小さくないと思っています。それに加えて、意義の大きな平成司法改革ではありますが、改革された制度を運用していくべき現場の裁判官や弁護士、検事には、今も改革にとまどいや反感が少なからず存在しているのが事実です。そうした現場の法曹の方々に、現場から司法改革を訴え続ける意義について少しでも共通理解が得られればと思っています。
二〇〇四
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- 和書
- 在るということについて