出版社内容情報
地裁で有罪判決をくだされた酩酊窃盗被告事件。控訴審へ望みをつなぐ被告人と弁護士たちの闘いがはじまった。はたして無罪は獲得できるのか。
1.決意
2.控訴審
3.証拠調べ
4.逆転無罪
5.資料
はじめに
この本を書きはじめた最初のきっかけは、裁判中に私自身がこのような本があったならば読んでみたいと思っていたことである。
つまり、実際に刑事裁判を経験した人(被告人)が全体を通じて思いを述べ、専門家(弁護士)が刑事裁判の流れを解説するといった本がないものかと思っていた。
裁判が始まった当初の私は、日本の司法、裁判についてほとんど何も知らないという状態だったので一般の人が裁判のありさま、感想を書いた書物があれば是非とも読んで参考にしたいと思っていたのである。
しかし、実際に探してみると、私の思い描いた本はとうとう見つからなかった。
漠然と「誰かが書いてくれたらいいのに……」そう思っていた。
裁判が進んだある日、松井弁護士から
「事件や裁判のすべてを整理するという意味も含め、当事者にしか書けない本を一緒に書いてみませんか」
という言葉をもらったのである。
たしか一審の終わり頃だったと思うが、当時の私は裁判が進むにつれ「何事も経験」という自分の信条を根底から覆されたような気持になっていた。
「しない方がいい経験」もあるということを思い知ることになり、自分はもう刑事裁判の被」へと変わる日は来ないかもしれない。
それでも、この本を書いたことでいつの日か「貴重な経験だった」と思える日が来たなら、こんなに嬉しいことはない。
二〇〇三年七月 石原 悟
内容説明
一審有罪判決から立ち直り、逆転無罪を勝ち取るまでの被告人と弁護人の苦悩と闘いの軌跡。
目次
第1部 決意(一審判決;一審判決直後 ほか)
第2部 控訴審(第一回公判期日;職権 ほか)
第3部 証拠調べ(鑑定人尋問;時刻表を探せ! ほか)
第4部 逆転無罪(弁論;判決 ほか)
第5部 資料(控訴趣意書;判決文(控訴審))