内容説明
終戦間際、行き場のない恐怖が人々を狂気に駆り立てた。朝鮮人の父と日本人の母の間に生まれた李明俊、日本人名・澤仁志―。1982年、日韓文化交流で来日し、生まれ故郷で母の遺骨を捜す明俊。案内したのは、かつて同じ小学校に通っていた松井剛志だった。日本と韓国の過酷な歴史に翻弄された人々の人生が交錯する。
著者等紹介
石川郁夫[イシカワイクオ]
1937年礼文島船泊村生まれ。幼少時を利尻島沓形村、稚内市で過ごす。同人誌「文芸北国」主宰、「愚神群」「VITA」同人。現在、同人誌「ペタヌウ」編集人(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ももちゃん
1
陳腐な言葉にはなってしまうけれど、歴史から学ぶということがどういうことなのかを考えさせられた。人は、一つの体のうちに両面の精神を住まわせていて、だからこそ出来事が自分の内面の一部になるように、心に刻んでいくこと。悲しみや憎しみや罪の意識に責められながら、現在穏やかな暮らしの中にいる人々の、消すことのできない重い記憶、苦しみの世界で悶えさせる元凶こそ憎んで、過去の痕跡から感じつづけること。絶望的な状況の中でも、私たちは理想のなかで生きることを諦めてはいけないなと思ったりした。いい作品でした。2025/10/17




