内容説明
物語は、女性製造販売の大手企業、カスタムメイド・ガール社が管理する「コンクリートの島」から幕を開ける。クローン綾波さながら、成長ホルモンと栄養剤を満たしたタンクの中に浸かる娘たち。この素体を利用して、顧客の注文通りのCMガールが製造されてゆく。身長二十五センチの盆栽娘、両性具有体、背中合わせのシャム双生児、異星人ふうに造型された娘、鱗におおわれたリザード・ガール、翼の生えた鳥娘…。主人公格のジェイドは、異様に大きな青い目を持つCMガール。柳模様の美しい箱に収められて島から顧客のもとへと出荷されたジェイドがたどる数奇な運命を描くメインプロットは、古典的なポルノグラフィ(たとえば『O嬢の物語』)の文法に従っている。一人称で語られるジェイドの物語と並行して、彼女と同時に「生産」され、コンクリートの島を出た娘たちのエピソードが断章のように挿入されてゆく。虐げられつづけてきたカスタムメイド・ガールたちがついに団結し、男社会に叛旗を翻すクライマックスは、ページを繰る手ももどかしいほど。圧倒的な密度と荒削りなエネルギーに満ちた処女長編を、作家的成熟を経た一九八〇年代に全面改訂したことが結果的に功を奏したのかもしれない。過激な性描写や歴史的希少価値を抜きにしても、現代SFの最先端としてじゅうぶん勝負できる傑作だ。
著者等紹介
ワトスン,イアン[ワトスン,イアン][Watson,Ian]
1943年英国南東部セントオールバーンズ生まれ。オックスフォード大学卒。1967年から3年間東京に滞在。東京教育大学等で英文学を教える。処女長編「エンベディング」でアポロ賞受賞(フランス)、シクラス賞受賞(スペイン)。スタンリー・キューブリックに才能を見込まれ、彼の生前に映画「A.I.」の脚本執筆依頼を受ける
大島豊[オオシマユタカ]
1955年生まれ。上智大学外国語学部卒。「レッド・マーズ」の翻訳者として第30回星雲賞受賞
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