内容説明
中米の小国、パライソ。日本大使館・二等書記官の波間三郎は四十を過ぎて、アルコールに人生をまぎらわす生活を送っていた。そんなある日、合弁企業の邦人、谷田部貞造副社長が誘拐され、直後に過激派の犯行声明がマスコミに届けられた。小国を襲った大事件は大使館を巻き込み、波間が身代金の引き渡し役をつとめることになる。しかし波間は、何者かの妨害のため引き渡しに失敗、谷田部は遺体で見つかる。かつての波間の憧れの女性、旅行エッセイストのジョナス・亜紀子は事件と前後するようにパライソに現われた。波間は、亜紀子を求め、男としての再生を賭ける一方、汚名返上を期して単独で犯人捜しを始めるが、いつしか日本人移民史の暗部に迷いこみ…。哀歓を知ってしまった男女の恋を織り込み、衝撃的なラストまで息もつかせない待望のサントリーミステリー大賞受賞第一作。