内容説明
印刷会社を経営する高泰人は、不況に喘ぎながらも自宅を新築し、借金地獄に陥った。しかも高利貸しや知人たちに返済を迫られて自転車操業を繰り返し、すでに金銭感覚が麻痺していた。ようやく二千万円をかき集めて危機から脱出できるはずたっだ高は、思わぬ窮地に追い込まれ…。飽くなき欲望の魔力に呑まれた人間の恐怖と運命の意外な陥穽とは。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ミスターテリ―(飛雲)
37
族譜の題名のごとく、主人公たち全員が在日韓国人という一族の系譜から逃れることができない。一人の男が印刷会社の資金繰りのため、同じ同胞のもとを回って、毎日ありとあらゆる手段を使って金を集める姿が、まさに人間の欲望そのものを表現する。そしていつのまに金を借りることが目的に、その厳しさがまさに在日の置かれている状況にを暗示する。日本で平凡に暮らすはずがつねに在日という事実が彼らを縛りつける。これほどの情熱をもって小説が書けるのか、梁石日はその苦しみ、悲しみ、憎しみをどこまでも描き続ける。凄まじい小説であった。 2022/07/10
aj
4
相変わらず読みにくい構成だが、後半は引き込まれて一気に読まされた。破滅へ向かっていく様を熱のある文体で一気に読ませる。実体験をもとにあるだけにリアルだ。迫力ある。マルクス主義、ナショナリズム、在日の苦悩。日本人はナショナリズムなんて感じる機会もないし意識もない。日本人としての政治観は持つべきだろうと思った。2008/10/04
方々亭
3
先日、著者のヤン・ソギル氏の訃報があった。ギラギラした氏の新しい作品がもう読めないのかと思うとさみしい。2024/06/23
ハルチソ
2
闇の子供たちがなかなかだったので、気になって読んでみたけど、いまいちグッとこない内容だった…。2015/06/02
jjj
1
「あなたは自分で自分を持てあましているのよ」と明愛がいった。「そうかもしれない。おれには自分という人間がよくわからない」泰人は自分が人一倍、金や女に強い興味を持っている人間であることを認めていたが、その反面どうでもよかったのである。彼の資質は、いまやっている事業とは正反対のことを欲しているように思えた。(288頁)この物語のなかで、心に残った一文です。2023/09/01
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