内容説明
変えられてしまった人生。住民の4人に1人が犠牲となった沖縄戦。鉄の暴風、差別、間諜、虐殺、眼裏に焼き付いた記憶…。芥川賞受賞から26年。“沖縄戦”をライトモチーフに現実と対峙し続ける作家の10年ぶりの短篇集。沖縄戦の記憶をめぐる5つの物語。
著者等紹介
目取真俊[メドルマシュン]
1960年、沖縄県今帰仁(なきじん)村生まれ。琉球大学法文学部卒。1983年「魚群記」で第11回琉球新報短編小説賞受賞。1986年「平和通りと名付けられた街を歩いて」で第12回新沖縄文学賞受賞。1997年「水滴」で第117回芥川賞受賞。2000年「魂込め(まぶいぐみ)」で第4回木山捷平文学賞、第26回川端康成文学賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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J D
59
沖縄戦は、まだ終わっていない。これが、率直な感想。5つの短編からなる沖縄戦の話。いづれの作品も息苦しい。だがそれが現実。「露」は、芥川賞を受賞した「水滴」の大元のネタではないか。若い頃、運天港でバイトしていた時に年配者から聞いた話を書いた作品が「水滴」でその話の内容が「露」なのだろう。少し不思議な感じがした。うちなーぐちでルビがふられているのが、ヤマトとの距離を感じた。日本兵も米兵同様に沖縄の人にとっては脅威だった。いかなる理由があっても戦争は人を傷つけるだけ。哀しみしか生み出さない。2023/05/05
ちえ
40
沖縄戦、沖縄の問題を書き続ける作家。「魂魄の道」「露」「神ウナギ」「闘魚」「斥候」の5編の短編集。海を埋め尽くす米軍の艦隊、高射砲や機銃掃射での攻撃、友軍からは守られず壕を出された。受けた被害だけではなく自分が行ったことに苦しめられ続ける沖縄の人達。今も続く人々の魂の苦しみを読む。特に「神ウナギ」と「露」に圧倒された。「露」の宮代さんの中国行軍の話に、何年も前に亡くなったMさんのことを思い出した。認知症とともに、若い頃から精神的な病で病院に入院していたこともあったらしい。ある日、話を聴いていると↓(続く)2023/08/19
松本直哉
23
目取真俊はユタ(霊媒師)なのかもしれない。今も沖縄の土に埋まる無数の、しかし風化しかかった骨たちの声を聞きとり、彼らになりかわってあの戦争の惨禍、民間人も巻き込まれ、友軍にも見捨てられ、米軍スパイの嫌疑で殺されていった無惨を語り継ぐとき、読む者もまたその戦場に立って血の臭いを嗅ぐ。残念なのは、そのときに比べて今のほうが良い世の中になったとはとても言えないことで、旋回するオスプレイを眺めながら、これからもっと悪くなるという登場人物のつぶやきに、我々は反論する言葉もなく、ただ黙ることしかできない。2023/08/11
フーミン
17
今やビーチリゾート・オーシャンビューと観光スポットの沖縄はかつて沖縄戦により全島がアメリカ軍の占領下に置かれ沖縄返還される辛い歴史があった。特に『斥候』は戦争時の傷跡を今なお消える事の無い記憶として背負って生きている人々がいることを実感した。戦争は悲劇しか生まないことを忘れてはいけないと改めて思った。2023/04/08
yuki
8
今も続く沖縄の記憶…それを忘れているのは歴史を学ぼうともしてこなかった私たち。沖縄の過酷な歴史はやはり学ばなければと思いました。辺野古基地問題での作者の思いが伝わります。もっと知りたいと思いました。2023/11/20