内容説明
御先祖様、申し訳ありません。花の盛り、桜の木が無残にも伐り倒された―墓に晒を巻いて、むらびとは泣く泣く村を出た―雪の中、ひまわりの花が待っていた―ダムに揺れた愛する故郷を涙で曇ったレンズで見て20年。
目次
一九七七年十月十日、写真がとれた!
皆な仲良く暮らしていたなあ
山や川や木たちとともに
お互い助けあって
むらの恵み
笑いがたえなかったなあ
私のボーイフレンドたち
どこも天与の遊び場
分校の子ら
元服式〔ほか〕
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
小町
8
絶賛します。よもや写真集で号泣するとは思わなんだ。これに関わらず、写真ってのは、技術よりカメラマンと被写体との関係性で決まるんじゃないか、って思う。これは村がダムに潰される時、その村をこよなく愛すおばあちゃんが、簡易カメラで撮りまくったと言うストーリーがあって始めて感動させる。だからプロには絶対撮れない写真なんだ。ストーリーを先に知ってるから、まあ感動的なんだろうなとは思ったけど、途中からワケわかんないけど泣けてしまった。写真に添えられたたづ子さんの言葉も愛惜が伝わってくる。2011/04/09
ユー
7
増山たづ子さん生誕100年の区切り。丁度、揖斐川町で増山たづ子さんの写真展が開催されていたので、その余韻で本書を開けました。特別な事は何も無い、普通の生活。村民の「普通」がダムによって奪われてしまう。やり場のない悲しみ。でも写真に写っている皆さん、とても良い表情されてますよね。2017/11/08
ochatomo
6
日本最大の多目的ダムが1971年計画発表1976年事業着手、1977年60歳でピッカリコニカを買い、失われる村の風景を残し続けた貴重な昭和農村の記録 共に働き遊び、仲間と一緒に写る笑顔が我を失う素晴らしさ 下流域の住民のために、徳山村の豊かな自然、何百年生きた大木、縄文時代からの歴史が水没された 著者は1985年岐阜市へ移転してからも撮影に通い2000年ダム着工後、2008年の完成を見ずに2006年亡くなった 美しいものをありがとう 1997刊2018/04/05
はる
5
ダム建設により廃村が決まり、初めて手に取るカメラで村人や自然を写真におさめる。 空き家の壁の落書きが泣けた【出ていくものの悲しさを誰がわかってくれようか。我が愛しき山や川よ、お前たちをしのばずにはいられない】 どんなに不便で貧しくても、この人達にとってはこの村の生活がなにより楽しく幸せだったと、写真から伝わった。 飼い主に置いていかれた猫。雪の中に咲く向日葵、お地蔵さん、美しい自然、村人の笑顔、笑顔、笑顔、笑顔。 もう二度と見ることが出来ない風景、切ない。たくさんの写真を残してくれてありがとうございます。2018/09/02
okatake
5
徳山ダム、徳山村、増山さんとも何となく知ってはいましたが。。。図書館から借りてきました。写真に写っている人々の笑顔が素敵!写真には芸術や記録、報道などいろいろな機能が備わってプロの写真家もいますが、増山さんの写真からはその人柄が伝わってきて、何とも言えない。写真を勉強する云々ではない。もっと奥深い、優しさや愛しさがあふれています。そして、皆さんが一生懸命生きてきたことを伝えてくれています。2014/09/16