内容説明
結婚を主題としつつ、形式的にも内容的にもプラトンの対話篇に範をとった『エロス談義』の新訳、および古代ギリシアの恋物語集『情話五題』に加え、哲学者や神官という顔のほか公職の経験もあった著者が、「ローマの平和」の下に生きるギリシア人にしてかつ現実主義的な常識家として、同時代の知識人や権力者、余生に迷う老友や将来に悩む若者らに贈った政治的処世訓など、全7篇を収録する。
目次
エロス談義
情話五題
哲学者はとくに権力者と語り合うべきことについて
教養のない権力者に一言
老人は政治活動に従事するべきか
政治家になるための教訓集
独裁政治と民主政治と寡頭政治について
著者等紹介
伊藤照夫[イトウテルオ]
京都産業大学文化学部教授。1942年長野県生まれ。1974年京都大学大学院文学研究科博士課程修了。1989年助教授を経て現職(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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singoito2
8
今回は政治論集。解説の宜しきを得ながら、ローマ帝国治下のギリシャ自治都市の政治的綱渡りを思うことが出来ました。日本政府と米軍の飴と鞭の下で呻吟する沖縄県政みたいな感じかなぁ・・・福音書が描く時代のパレスチナを考える上でもヒントになったように感じました。2024/06/26
roughfractus02
5
純粋な愛(αγάπη)を同性愛や少年愛を異性愛より価値あるものとした古代ギリシアの恋愛観に対し、ローマ帝国に生きるギリシア人である著者は、男女の、特に夫婦の愛を重視する。愛(έρως/性愛)は同性異性を問わず、男性同士の友愛(φιλíα)は男女間でも成り立つと説く著者は、古代ギリシアの恋愛観を、生物としての人間が自然=素質(φύσις)に従う性愛から捉え直す。独裁政治では暴力、寡頭政治では横柄さ、民主政治では平等が無秩序を生み出すという失敗の場面から政治を捉える著者は、自然に従う度合いから政治を判断する。2019/06/23