内容説明
古代ギリシア三都市を舞台に展開される波瀾万丈の物語。筋書きもどんでん返しの連続、その展開に思わず息をのむ。
著者等紹介
中谷彩一郎[ナカタニサイイチロウ]
神戸大学、関西大学非常勤講師。1972年兵庫県生まれ。2001年、ケンブリッジ大学古典学部修士課程修了。2003年、東京大学大学院人文社会系研究科博士課程中退。2005年、ウェールズ大学スウォンジー校古典学古代史エジプト学科博士課程修了。2005年、Ph.D.(ウェールズ大学)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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roughfractus02
7
恋愛をテーマとしながらも、レスボス島を舞台とした同時代の牧歌的な『ダフニスとクロエ』と異なり、本書はテュロス、アレクサンドリア、エペソスをめぐる冒険物語となっている。恋愛の成就に至る苦難も複雑であり、困難に出会うたびに性的なものから崇高さへと変容する愛の概念の発展が見られる。古代ギリシアの古典を散りばめた本書だが、興味深いのは、ギリシア小説では珍しい一人称で語られる点であり、古来登場人物の運命を予見させるように読者に促す絵画が出てくる場面では、細部までリアルに描写されるという近代小説に近い特徴が見られる。2022/07/24
きりぱい
4
面白かった。クレイトポンが語る恋と冒険の物語。『ダフニスとクロエー』を読んだ時に知った、現存する古代ギリシャ恋愛小説5編のうちの1編で、ダフネ以上にスぺクタクル。異母妹との結婚を前にクレイトポンが心を奪われたのは従妹の美しいレウキッぺ。思えばアルテミスは二人の結婚を告げていたのに、欲望が呼び起こす裏切りや奸計、暴力と、劇的に試練続きで、もう何回死ぬんだ!と波乱展開にのまれてしまう。絵画描写による暗示、予兆や神々の宣託、愛の悦びを得られるのは少年か女かまで、神官でさえ口をついて出る美しくも性の猥雑さで。2012/10/09
刳森伸一
1
エロースの文学。性的な描写が露骨とかそういうことではなく、愛について、異性愛も同性愛も、性愛もプラトニックラブも、愛と憎しみの関係も全て語り尽くそうとする恋愛小説。描写や構成も良く、2世紀後半に既にこれだけの小説があることに驚く。2015/06/19