内容説明
理想的君主と仰がれたキュロスの生涯を語りつつ、政治、教育を論じる。連綿と読み継がれた書。本邦初訳。
著者等紹介
松本仁助[マツモトニスケ]
大阪大学名誉教授。1927年大阪市生まれ。1951年京都大学文学部卒業。同志社大学教授、大阪大学教授、大阪学院大学教授を経て2002年退職
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感想・レビュー
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roughfractus02
8
ヘロドトス『歴史』の記述より、本書のペルシア王キュロス2世は理想化していると言われる。ギリシア積年の敵であるペルシアの貴族階級にこそギリシアの高次の文化を見出せると考える著者は、本書をギリシアの教育への提言と意図し、ギリシアの読者を挑発していたように思える。「美にして善(カロカガティア)」は敵にこそあり、ギリシアの誰もが共有するとされる「真理(アレテー)」は、この美徳なしに行いとして現れない、という懸念が著者にはあった。子供の教育にあまり関心のないギリシアに対し、著者は国家の衰退の兆候を感じていたようだ。2022/06/26
ハルバル
6
ペルシア王国創始者キュロスを理想的な君主像として描き、支配者のあるべき姿を説く。クセノポンはアテナイのような徹底した民主政治よりもスパルタやペルシアのような優れた王によって統治される政体を理想としていたらしい。しかし民主政治に衆愚が付き物なように、無能な王や後継者によってそれもまた堕落することを簡潔に記す。スサ王アブラタダスと王妃の夫婦愛と悲しい結末、その王妃を愛してしまうメディア貴族、息子を殺された復讐の為にキュロスを助けるアッシリア太守など様々な人間模様も面白く歴史小説のように読めた。2015/05/27
ちょこも
1
アナバシス同様、あの時代の様子が今もこうやってうかがい知れ、またすでにこのような表現をしていたことに感動。 ただ、自分の読解力の低さ故か、なぜドラッカーがあれだけ激賞するのかは理解できなかった。ちょっと間をおいてから再読してみるつもり。2017/11/05
tooka
1
支配権を獲得するよりそれを持続させることのほうが難しい。現代でも通用する教訓も多い。2008/10/26