内容説明
古代ギリシアにおける最大の弁論家かつ散文作家であったデモステネスの作品のうち、本巻は比較的初期の四作品を収録する。法廷弁論の形式をとりながら、事実上は政治弁論であり、紀元前四五〇年頃の腐敗しきった政治を攻撃する。桧舞台となるアテネの政治情勢を如実に伝える根本資料としても、ローマの文人キケロが絶賛した修辞的表現に満ちた文学作品としても興味深い。本邦初訳。
目次
第23弁論 アリストクラテス弾劾
第24弁論 ティモクラテス弾劾
第25弁論 アリストゲイトン弾劾第一演説
第26弁論 アリストゲイトン弾劾第二演説
感想・レビュー
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roughfractus02
8
「行動が伴わないかぎり、すべての言論は空虚である」という著者の有名な言葉は、紀元前4世紀アテナイの政治状況と法体制をよく表している。著者が弾劾するのは、マケドニアの帝国勢力がポリスを脅かす現状にも受け身のままの政治家たちであり、また、弁論が政治を告発するのは、統治する側も法に支配される高次法が存在しないアテナイにあって、弁論が統治する側を動かす力だからである。その上で、統治する側の言葉の「空虚」を批判する著者は、能動/受動の2項コードによって聴衆を動かす弁舌を駆使しながら、聴衆も能動的であれ、と訴える。2019/08/06