内容説明
母は苛酷な運命を、顔を上げて前向きにしっかりと生き抜いた。その母の人生は、一輪の花のように見えてくる。だれに見せるために咲いているんじゃない。ひたむきに生きてきた歳月が、気がついてみたら野に咲く一輪の花になっていた。映画「学校」の原案者が、混乱と貧困の時代を生き抜いてきた世の母親たち、そして今を生きるすべての母親たちに贈る。
目次
第1部 思い出
第2部 母の記録(生い立ち;満洲での生活;引き揚げ)
第3部 私の記録(私の履歴;母の追憶を歩く)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
へくとぱすかる
52
読みながら、胸の底からあふれ出る思いが止まらなかった。涙ではなく、この世界に生きることの意味と重みなのだろうか。幼いころから苦労を重ね、満州からの引き揚げで、わが子を亡くす悲劇も味わった著者のお母さんは、それでも残された子どものために必死で生きていく。戦後の繁栄の中でも、貧しく暮らす人々は少なくなかった。やがて夜間中学の先生となった著者に、お母さんが託した記録ノートと、老境になって描いた色鉛筆の絵。これを世に出せたことが、何よりお母さんへの贈り物となっただろう。私たちも戦中戦後の歴史を正しく知ろうと思う。2020/11/08