感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
崩紫サロメ
17
漢籍の醍醐味でありながら、あまり知られていないであろう目録学の面白さを紹介する。目録は膨大な量の漢籍を分類(四部分類が有名)したものだが、分類することは、書物を生み出してきた「学術」のあり方を記録することであり(p.22)、目録学は全体を俯瞰する視線、「会通」することの重要性を教えてくれる(p.44)。しかし、索引が作られ、更にデジタル化が進むことで「会通」する視座を欠くことになってしまうのではないかという危惧する。四部分類は20世紀前半にその役割を終えたが、今後どのように「俯瞰」するか、考えさせられる。2022/06/23
さとうしん
4
三編のうち宇佐美文理「子部の分類について」の、四部分類の子部は他の三部に収まらないような雑多な残り物を収める部であるという指摘、永田知之「目録学の総決算」の、紀昀が『四庫全書』の編纂に関与したことで、逆に経学を至上とする伝統的な学術観から自由になれたのではないかという指摘が面白かった。孫悟空の『西遊記』と『長春真人西遊記』とが混同され、この二つがそもそも別の書であることがわからないまま『西遊記』の著者が邱長春というのは仮託であるというもっともらしい考証がなされるのは、笑っていいのか悪いのか…2017/06/03
ふみ乃や文屋
1
中国関連書の出版傾向を見ていると、今年は簡牘および目録学関係のものが多いような印象。本書も今年(2017年)3月に刊行された。京大人文研漢籍セミナーのシリーズは、多少知識がないと読みづらいものが多いけれども、これはその中でも読みやすい。どの国でも目録は作られる。とりわけ中国が目録を「学」に仕立て上げる学問的心性や「分類」することへの情熱というのは大変なものがある。中国学に接するのであれば目録学を通らずに進めようか。2017/08/17