内容説明
本書はここ数年にわたる水羽信男氏(広島大学助教授)との論争によって生まれたものと言うことができる。論争の中心点は、内戦期に激しくたたかわされた「中間路線論」をどのように評価するかであり、「中間路線論」を最も強く主張していた施復亮をどのように評価するかである。論争の内容については本書の補論によって明らかにしてあるので繰り返さない。この論争は同時に、民主党派といわれる中間の党派の政治路線をどのように捉え、その変化についてどのように理解するかという問題をも提起していた。また中国革命をどのように捉え、どのように考えるかという問題も、この論争のなかには含まれている。
目次
序章 「中間路線」とは何か
第1章 民主同盟と中間路線論争
第2章 民主建国会の政治路線―黄炎培を中心に
第3章 国民党革命委員会の政治路線
第4章 中国共産党と第三勢力との関係
補論1 再び施復亮と中間路線論について―水羽信男氏の批判に答える
補論2 水羽氏の「施復亮」の問題点について
補論3 「独断と願望の歴史論」はどこにいきつくか
感想・レビュー
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ゼウスR
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WW2後を議論の中心とした、中国国民党にも共産党にも属さない「第三勢力」に関する研究書。 民主同盟、民主建国会、国民党革命委員会らがいかにして成立し、どのような主張を掲げて国共両党と関わり、「新民主主義」へと合流していったのかを論じている。 筆者は序章にて、当時の中国国内で「中間路線論」への学術的評価が過大に肯定的な方向へと変わりつつある点を例に挙げ、「歴史の事象に対する評価がその時々の政治的要求に左右されることが、依然として続いていると言わざるをえない」と述べており、客観的な学術研究の困難さを感じた。2022/12/03