内容説明
本書は、宋代以降における宗族を考察の対象とする。まず最初の説明しておかねばならないのは、本書で用いる宗族という用語の意味である。現在私たちは、血縁関係および婚姻関係によって結ばれている人々を指して親族と呼んでいる。中国では、「親属」という言葉がこれに相当し、「本宗」と「外姻」の両者が親属=親族のなかに含み込まれている。「本宗」とは、自己の男系の血縁によって結ばれている人々(男系血縁親)とその配偶者のことを指し、「外姻」は、婚姻関係を挟んだ関係であり、女系血族、妻の実家、娘の嫁ぎ先など、要するに本宗ではなくして、親類関係にある者をいう。このうち前者の「本宗」が宗族という用語の最も広い定義に相当する。つまり、同じ祖先から分かれた父系出自の親族である。
目次
第1章 宗族の歴史的特質に関する再考察
第2章 宗法の継承
第3章 祖先祭祀と家廟―明朝の対応
第4章 夏言の提案―明代嘉靖年間における家廟制度改革
第5章 宗族形成の再開―明代中期以降の蘇州地方を対象として
第6章 清朝と宗法主義
第7章 清代における蘇州社会と宗族
第8章 宗族普及の一局面―江蘇洞庭東山を対象として
第9章 珠江デルタにおける宗族の普及
付篇 明朝による服制の改定―『孝慈録』の編纂