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内容説明
傷つきやすく、傷つけやすい、少年の日々。少年の日の傷跡。
目次
サネカズラのからまる屋敷
穴の中にいる魚
病気と怪我
ズック靴投げこみ事件
死なない夜の鳥
母のこと
アカチンポ
ぼくたちの犯罪
癒えない傷
川底の青い国
魚に敗北した日
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
はる
58
戦後間もない頃。自然豊かな四国の小さな集落に、母親とともに引っ越してきた双子の兄弟の日々。絵本作家・田島征三の少年時代を綴った自伝的エッセイ。強烈で濃密なエピソードの数々。豊かで美しい自然とは対象的に、公然と贔屓する教師、子供にも容赦なく暴力を振るう大人、残酷な苛めをする同級生たち……。優しさなど微塵もない、皆生きることで必死だったのだ。それでも逞しく日々を生きる兄弟ふたりの、何と魅力的なことか。今ではどこにも無くなってしまった、かつての日本の姿がここにある。良書。2022/01/16
天の川
54
双子の絵本作家、兄の田島征三さんが語る、終戦直後に移住した高知での4年間の思い出。ご本人曰く「抱きしめたいほど大切な愛おしい思い出の詰まった日々」は一筋縄ではいかない。よそ者に厳しい保守的な村。教師や同級生によるあからさまなイジメ、村人の冷たい視線を浴びながら、それでも豊かな自然の中で双子の兄弟は子どもらしい伸びやかな日々を送るのだ。兄弟が庇い合い、悪戯を繰り広げる日々が何とも眩しい。双子以上に村で冷遇されていた梅木さんやセンジに図らずも与えてしまった心の傷…「しばてん」の原点となっているのかとも思った。2022/01/24
Natsuki
42
それぞれが絵本作家として活躍している田島兄弟。今作は弟である征三さんこと、セイちゃんが赤裸々に語る少年時代。楽しい思い出どころか、むしろ苦い思い出の方が多く、理不尽な大人や子どもの無邪気な残酷さの中で、必死に日々を生き抜く姿が紡がれる。そして、田島兄弟が創る絵本たちが、まさにこの頃の経験に紐づいていることを実感する。溢れんばかりの生命力が宿る絵本の数々、そのルーツを感じる1冊。2024/10/26
ネギっ子gen
40
【新しい村では木の実まで僕だった】 職場で、田島兄弟のことが話題になったことで、本書を読む。わたしの父親が南国土佐の生まれということもあり、土佐弁が懐かしかったです。しかし、その田園生活は単なるノスタルジアには収まりません。学校で、いじめられます。村の子どもたちから。先生から。そして、間借りした叔父のジンマからもいじめられる。それは母親も同じで、後年「何度、井戸に飛び込んで死のうと思ったかわからない」と……。兄の征彦さんが巻末で「<のろまのブーちゃん>より」の一文を。絵をたくさん載せているのが嬉しい。⇒2022/02/12
ochatomo
11
田島征三さんを知るのに必読 バッタに励まされて歩いたことや初絵本しばてんにつながる同級生への体罰等、写真や絵や征彦さんからの言葉もあり、無茶な悪戯した思い出を実感づける 双子でいる時はよくても、友達が入ると『お互いに自身の不器用さや、要領の悪さ、みっともなさなどを相手の中に見つけ出していらだつ』に納得 生き物と格闘する感覚は中々持てないが、彼の爆発的なエネルギーを感じる絵から小さな体験をつなげて思い出し想像するヒントにしていかなければ生の豊かさが伝わっていかないだろう 1992刊 映画化1996年2021/04/27