出版社内容情報
分子系統樹推定の手法でマダガスカル島でかって繁栄した象鳥の仲間の進化の道筋が解明された。本書ではこの進化の道筋をメインテー…日本の本州の2.6倍もの面積を擁するマダガスカル島は、古くインドと共に「インディガスカル」としてほかの大陸から分かれ、7500万年前までにはさらにインドとも分かれ、以後アフリカ大陸の傍らで地理的に孤立したまま今日に至ったとされる。
しかし、この島に生息する動植物相のありようはプレートテクトニクス理論から一直線に推測されるような単純なものではない。生息種の大部分を比較的限られた類縁に属する固有種が占め、しかもそれらがそれぞれ、非常に大きな多様性を見せているのだ(例えば、霊長類ではヒト以外の真猿類が存在しない一方、原猿類の仲間は他の地域では見られないレパートリーを示すなど)。
こうした独特の動植物相がどのようにして生み出されてきたのかは、進化生物学上の大きな謎だったが、DNA塩基配列の置換を統計的に調べる分子系統樹推定の手法がこの謎解きを可能にしつつある。
その成果の一端が、この分野を先駆的に開拓してきた著者らを中心とする「象鳥会議」の象鳥DNAプロジェクト・グループによってもたらされた。
長谷川政美[ハセガワマサミ]
著・文・その他
内容説明
マダガスカル島でかつて繁栄した象鳥(エピオルニス科の鳥)の仲間の進化の道筋が解き明かされた。著者が先駆的に開拓してきた分子系統樹推定の手法がもたらした成果だ。本書では、このテーマを中心に、ガラパゴス諸島とは異なる、マダガスカル島自然史研究の意義、それを解明する研究の枠組みの奥深さが、研究者本人の筆で生き生きと語られている。
目次
第1章 マダガスカルの歴史
第2章 生命の樹と分子系統学
第3章 真獣類の進化
第4章 マダガスカル哺乳類の起源
第5章 象鳥の起源
第6章 マダガスカルの現生鳥類、および爬虫類と両生類
第7章 マダガスカルの節足動物
第8章 マダガスカルの植物
著者等紹介
長谷川政美[ハセガワマサミ]
1944年、新潟県生まれ。1966年東北大学理学部物理学科卒業、70年名古屋大学大学院理学研究科博士課程中退。同年、東京大学理学部助手。統計数理研究所研究員を経て同研究所助教授、教授。その後、復旦大学(上海)教授を経て、統計数理研究所名誉教授、総合研究大学院大学名誉教授。山階鳥類研究所特任研究員、進化学研究所外来研究員。理学博士(東京大学)。ライフワークとして進化生物学を研究してきた。受賞:1993年、日本科学読物賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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