出版社内容情報
自分とは,人間とは何か――著者は,この問題に少年時代に取りつかれてから30年.脳科学を専攻し研究を重ねてきた.
著者30歳のとき,処女作『知性の脳構造と進化』を小社から刊行.その副題は〈精神の生物学序説〉であった.それから16年.ついに〈序説〉でなく,〈本論〉を著すにいたった.それは「果実が熟すると自然に落ちるように」ことが運び,会心の作となっている.
著者はいう:
【私たちは自分の遺伝子の存続はもとより自分の幸福さえも超えて、人類の幸福を考え実現すべく努力する、そういう使命を負っている。自分の幸福のみならず皆の幸福のために努力する――そういう脳機能、つまりHQをとくに私たち日本人は進化的に発達させているはずなのである。
私たちの現状は暗いものかもしれない。邪悪と不幸も増えているようにみえる。だが、私たちの未来は必ず明るく開け、全世界の人々が幸福になる時が必ずくる。その来るべき未来への道筋の中で、私たち日本人はそれなりの使命を負うことになるだろう。ちょうど、吉田松陰が負ったような使命を、今度は「世界をよくするため」に、負うことになろう。そして、そうした結論・仮説を導くHQ理論が誤っていないことに、
まえがき
Ⅰ章 多重知性と多重フレーム
Ⅱ章 ヒトを特徴づける前頭連合野――脳間・脳内操作系
Ⅲ章 前頭連合野の進化
Ⅳ章「人間性」をつくるHQ
Ⅴ章 HQの個体発生――臨界期
Ⅵ章 衰退するHQ
Ⅶ章 発達するHQ
Ⅷ章 HQを大きく発達させ得る日本人
あとがき
ささやかな謝辞
「人間性の中心はHQという知性にある」とすることで、人間の謎をかなりの程度解くことができる。…生きる意味や目的さえも解ける。結論から言えば、私たちは人類の幸福のために生きる使命を負っている。
世界を見渡せば邪悪と不幸に満ちているように見える。本書は理論書なので、「時事問題」には言及するつもりはあまりないが…なぜ、現在の世界や日本で邪悪で不幸な出来事や人々が現れるのかに関しても、それなりの説明を与えることができる。…少なくとも理論的には、HQを伸ばすことで私たちは社会的に成功し幸福になることができる。「どうすればHQを伸ばせるか」という問題に関する研究も私の研究グループは進めており、その具体的な方法のアウトラインは既に判明している。「まえがき」より
内容説明
人間とは何か…ここにその答えがある。鍵はIQでもEQでもない。HQ(=人間性知性、超知性)にある。それは何百万年にわたる脳の進化の産物であり、それを核に考察を進めることで、人生の目的・私たちの生き方といった哲学的課題に、一定の科学的基盤を与えるだけでなく、多くの難問にも光をあてることができる。著者のライフワーク。
目次
1章 多重知性と多重フレーム
2章 ヒトを特徴づける前頭連合野―脳間・脳内操作系
3章 前頭連合野の進化
4章 「人間性」をつくるHQ
5章 HQの個体発生―臨界期
6章 衰退するHQ
7章 発達するHQ
8章 HQを大きく発達させ得る日本人
著者等紹介
沢口俊之[サワグチトシユキ]
1959(昭和34)年東京都葛飾区生まれ。北海道大学理学部卒。京都大学大学院理学研究科修了。米国エール大学医学部神経生物学科ポスドク、京大霊長類研究所助手、北大文学部助教授を経て、現在、北大医学研究科高次脳機能学分野教授。専門は認知脳科学、霊長類学、脳育成学。「自我」の脳内メカニズムを解明すべく、前頭連合野を中心とした研究を展開しつつ、近年では、「脳育成学」も推進させている
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