内容説明
ダーウィン進化論の中心概念「自然淘汰」には、マルサスが『人口論』で説く「生存闘争」が隠喩となっている。19世紀半ば『種の起原』を読んだロシアの博物学者たちは、つぎつぎと、この隠喩としての「生存闘争」に抵抗を示し、マルサス抜きのダーウィニズムを唱えた。植物学者ベケトフ、生理学者メチニコフ、魚類学者のケッスラーも、地質学者のクロポトキンも、その研究実績やフィールドワークから闘争なき進化を証明し、むしろ進化の要因は生物の相互扶助にあると語る。革命前夜の気高きロシア科学精神の抬頭。
目次
第1章 ダーウィンの隠喩とロシアの読者
第2章 マルサス、ダーウィン、およびロシアの社会思想
第3章 ベケトフ、植物学、自然界の調和
第4章 コルジンスキー、ステップ、突然発生の理論
第5章 メチニコフ、ダーウィニズム、食作用説
第6章 ケッスラーとロシアの相互扶助論の伝統
第7章 クロポトキンの相互扶助論
第8章 セヴェルツォフ、ティミリヤーゼフ、および古典的伝統